神生みを創作物語としてまとめています。
記紀の現代語訳を読みたい方は後半をご覧ください。

島々が生まれ、世界の骨格が整い始めたころ、
大地はまだ静かに脈打つだけで、山も川もなく、
風は行き場を探し、海はただ揺らぎ続けていました。
世界は「形」を得たものの、まだ「息」をしていませんでした。
伊邪那岐命と伊邪那美命は、淤能碁呂島の中心に立ち、
天の御柱の前で静かに目を閉じられました。
二柱の胸の奥には、まだ姿を持たぬ多くの神々の気配が
胎児のように眠っているのが感じられました。
世界は、次の段階を求めていたのです。
それは「自然の神々」の誕生でした。
島々が生まれたことで、世界の深層に眠っていた力が動き始めました。
海の底からは重い響きが、空の高みからは澄んだ光が降り、
大地の奥深くでは、まだ名もない神々が目覚めようとしていました。
伊邪那美命は胸に手を当て、静かに語ります。
「大地が、次の命を求めています。」
伊邪那岐命はうなずき、二柱は再び創造の力を合わせました。
その瞬間、世界の気配が変わり、
海も風も光も、すべてが二柱の動きを待つように沈黙しました。
最初に生まれたのは、大地の深みに静かに根を張る大事忍男(おほこぼくおしを)。 続いて、岩の霊を宿す石土毘古(いはつちびこ)、岩の巣のように大地を支える石巣比売(いはすひめ)が姿を現します。
境界を守る大戸日別(おほとひわけ)、息吹の力をもたらす天之吹男(あめのふきを)、 大地を覆う大屋毘古(おほやびこ)、風の道筋を整える風木津別之忍男(かざもつわけのおしを)と続き、 やがて海原を統べる大綿津見(おほわたつみ)が波間から立ち上がります。
その後、水門の神である速秋津比古(はやあきつひこ)と、 水の流れを柔らかく整える速秋津比売(はやあきつひめ)が生まれ、 ここまでで十柱の神々が揃いました。
速秋津比古(はやあきつひこ)と速秋津比売(はやあきつひめ)は、 河と海の境界を分かち合いながら、新たな水の神々をお生みになります。
泡のように軽やかな沫那芸(あわなぎ)と沫那美(あわなみ)、
水の気配を頬に宿す頬那芸(つらなぎ)と頬那美(つらなみ)。
さらに、天と地の水脈を分配する天之水分(あめのみくまり)と国之水分(くにのみくまり)、
水の恵みを蓄える天之久比奢母智(あめのくひざもち)と国之久比奢母智(くにのくひざもち)が続き、
ここで八柱の水の神々が揃います。
水はただ流れるだけではなく、 天から地へ、地から海へ、海から再び天へと巡る。 その循環のすべてが、この八神によって形づくられていくのでございます。
次に姿を現したのは、自然の骨格を立ち上げる四柱の神々でした。
風を導く志那都比古(しなつひこ)、
木々の成長を司る久久能智(くくのち)、
山の霊力そのものを象る大山津見(おおやまつみ)
そして野の生命を育む鹿屋野比売(かやのひめ)、またの名を野椎(のづち)と申します。
風が吹き、木が育ち、山が聳え、野が広がる。 世界はここでようやく、自然として息をし始めます。
大山津見(おおやまつみ)と野椎(のづち)は、 山と野の境界を分かち合いながら、さらに八柱の神々をお生みになります。
土の狭間を司る天之狭土(あめのさづち)と国之狭土(くにのさづち)、 霧の気配を象る天之狭霧(あめのさぎり)と国之狭霧(くにのさぎり)、 闇の戸口を守る天之闇戸(あめのくらど)と国之闇戸(くにのくらど)、 そして大戸の奥を司る大戸或子(おおとまとひこ)と大戸或女(おおとまとひめ)。
山の奥、野の果て、霧の流れ、土の層。 大地の細やかな表情がここで整えられ、 世界はより豊かで複雑な姿へと変わっていきます。
自然神が次々と生まれるたび、
世界は少しずつ色を帯び、
音を持ち、
香りを持ち、
ついには“息をする世界”となりました。
山はそびえ、川は流れ、
草木は芽吹き、風は吹き、
海は満ち引きし、
大地は豊かに広がりました。
伊邪那岐命と伊邪那美命は、
その光景を静かに見つめながら、
胸の奥に深い満足と、
そして次に訪れる運命の気配を感じていました。
自然神の誕生は、
やがて訪れる“火の神の誕生”という
大きな転換点へとつながっていくのです。

大地が整い、山はそびえ、川は流れ、草木は芽吹き、
海は満ち引きし、風は世界を巡り、
自然神たちがそれぞれの役目を果たし始めたころ、
世界はようやく「息をする大地」となっていました。
しかし、まだ生まれていない“最後の大きな力”がありました。
それは、世界に生命の循環をもたらすための、
破壊と再生の力でした。
その力は、伊邪那美命の胸の奥で静かに胎動していました。
自然神が次々と生まれた後、
天鳥船(あめのとりふね)
後の国譲りの章でも登場
大宜都比売(おおげつひめ)
食物神であり、ウカノミタマと習合(阿波国土神でもある2度目の登場)
をお生みになります。
伊邪那美命の身体の奥深くで、
これまでとは異なる重く熱い気配が動き始めました。
それは、山の奥で眠る溶岩のように赤く、
海の底で燃える火のように激しく、
世界の深層を震わせる力でした。
伊邪那美命は胸に手を当て、苦しげに息をつきます。
「この子は……他の神々とは違います。
世界を温め、育てる力……
けれど同時に、すべてを焼き尽くす力でもあります。」
伊邪那岐命はその言葉を聞き、
胸の奥に不安と覚悟が同時に芽生えました。
世界は、火の力を必要としていました。
しかし、その誕生は大きな代償を伴うことを
二柱は薄々感じていたのです。
ついにその時が訪れました。
伊邪那美命の身体から、
燃え盛る炎のような光が立ち上がり、
世界を赤く照らしました。
その光は、山の噴火のように激しく、
海の底の火山のように深く、
空の稲妻のように鋭く輝きました。
そして、炎の中心から一柱の神が姿を現します。
迦具土神(かぐつちのかみ)
その身体は炎そのものであり、
世界に熱と光をもたらす力を宿していました。
しかし、その誕生の炎はあまりにも強く、
伊邪那美命の身体を焼き、深い傷を与えてしまいます。
迦具土神が生まれた瞬間、
伊邪那美命は炎に焼かれ、倒れ込みました。
大地は震え、海は荒れ、
風は悲しみのように吹き荒れ、
世界は一瞬で暗い影に包まれました。
自然神たちはその気配を感じ取り、
山は沈黙し、川は流れを弱め、
草木は風に揺れながら悲しげにざわめきました。
伊邪那岐命は伊邪那美命の手を取り、
震える声で呼びかけます。
「伊邪那美……どうか、どうか……」
しかし、伊邪那美命の身体は炎に焼かれ、
その命はゆっくりと薄れていきました。
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は、
愛する妻の手を握りしめながら叫びます。
「伊邪那美……戻ってきてくれ……!」
しかし、伊邪那美命の身体は冷たくなり、
その魂は黄泉の国へと向かっていきました。
世界は深い悲しみに沈み、
自然神たちも息を潜めました。
伊邪那美命の亡骸は、
火の神を産んだときの炎によって焼かれ、
その身体の各部位から、
新たな神々が次々と生まれていきました。
それは、
死が新たな生命を生む
という世界の摂理そのものでした。
嘔吐物から生まれた神
金山毘古神(かなやまひこのかみ)
金属・鉱山を司る神。
世界に金属の恵みをもたらす存在となりました。
金山毘売神(かなやまひめのかみ)
鉱石の精霊のような女神。
金属の輝きと大地の奥深さを象徴します。
糞から生まれた神
波邇夜須毘古神(はにやすびこのかみ)
波邇夜須毘売神(はにやすひめのかみ)
土と陶器の神々。
粘土・土器・農耕の基盤を象徴する神々として生まれました。
尿から生まれた神
彌都波能売神(みつはのめのかみ)
水の流れ・泉・川の神。
世界に清らかな水の道をもたらしました。
和久産巣日神(わくむすひのかみ)
生命の再生・芽吹きを司る神。
臍は生命のつながりの象徴であり、
そこから生まれたこの神は、
死の中から新たな生命を生む力を象徴していました。
和久産巣日神からは後に伊勢神宮外宮に祀られることになる
豊受大神(とようけのおおかみ)
が生まれます。
伊邪那美命の“生命を生む場所”から生まれた神々は、
食物・穀物・豊穣を司り、
世界に「生きるための糧」をもたらしました。

伊耶那美命が息絶えたとき、 世界はひとつの音を失ったように静まり返りました。
伊耶那岐命は、 まだ温もりの残る妻の枕元に伏し、 その手を握りしめながら、声にならぬ嘆きを漏らしました。
「愛しい我が妻よ…… ただ一人の子のために、命を落とすなど思いもしなかっただろう……」
言葉は途切れ、 胸の奥から溢れ出す悲しみは、 やがて涙となって頬を伝い落ちました。
その涙は、 ただの水ではありませんでした。 神の涙は、世界の根源に触れる力を持つ。
涙が地に落ちた瞬間、 その雫は淡い光を帯び、 静かに揺らめきながら形を成していきました。
やがてそこに立ち上がったのは、 泣沢女神(なきさわめのかみ)。
彼女は、 伊耶那岐命の悲しみそのものから生まれた神。 香山の畝尾の木の下に鎮まり、 人の涙を知り、 悲しみの深さを知り、 その心を静かに受け止める神となりました。
泣沢女神は、 伊耶那岐命の涙の光をまとい、 その場に立つだけで、 悲しみが静かに形を変えていくような気配を漂わせていました。
伊耶那岐命は、 妻の亡骸を抱きしめるようにして、 出雲国と伯伎国(伯耆国)の境にある 比婆の山 へ向かいました。
そこは古来より、 「母なる神が眠る場所」と呼ばれた地。
山は深い緑に包まれ、 風は静かで、 大地は柔らかく、 まるで大きな母の腕の中に抱かれているような場所でした。
伊耶那岐命は、 その地に伊耶那美命を葬り、 長く長く、動かずに立ち尽くしました。
風が吹き、 木々が揺れ、 山は静かにその神を受け入れました。
そして、 伊耶那岐命の胸の奥で、 何かがゆっくりと変わり始めました。
悲しみは消えない。 しかしその悲しみは、 やがて新しい神々を生む力へと変わっていく。
泣沢女神が生まれたように、 伊耶那美命の死は、 この後に続く「黄泉への旅」と「禊ぎの神生み」へとつながっていく。

伊耶那美命が火之迦具土神(かぐつちのかみ)を生んだとき、 その炎はあまりにも激しく、母なる神の身を焼き尽くしました。 伊耶那岐命(いざなぎのみこと)はその光景を見て、 胸の奥に燃え上がる怒りと悲しみを抑えることができませんでした。
「我が妻を焼き尽くしたその火よ、 その命をもって償え――」
伊耶那岐命は腰に佩いていた 十拳剣(とつかのつるぎ) を抜き、 迦具土神の首を一閃に斬り落としました。 その刃は天と地を裂くように光り、 炎の神の血が飛び散って、 神聖な岩の群れに降り注ぎました。
血の雫が岩に触れた瞬間、 その岩が脈動し、命を宿しました。
そこに現れたのは、 石析神(いわさくのかみ)、 根析神(ねさくのかみ)、 石箇之男神(いわかのをのかみ)。
彼らは岩を裂き、根を断ち、 天地の基を整える力を持つ神々。 その誕生は、怒りの中に潜む創造の始まりでした。
次に、刃の根元に溜まった血が地へ滴り落ちました。 その血は風を呼び、雷を孕み、 新たな神々を生み出しました。
甕速日神(みかはやひのかみ)、 樋速日神(ひはやひのかみ)、 そして 建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)。
建御雷はまたの名を 建布都神(たけふつのかみ)、 豊布都神(とよふつのかみ) とも呼ばれ、 剣の力そのものを象徴する神。 その姿は雷のように輝き、 天を震わせるほどの威を放ちました。
建御雷は「国譲り」の章でも登場します。
最後に、柄に溜まった血が指の間から漏れ流れ、 地へと落ちました。 その血は闇に溶け、 深き水の神々を生みました。
闇淤加美神(くらおかみのかみ)
闇御津羽神(くらみつはのかみ)。
彼らは水の底に潜み、 流れと雨を司る神々。 怒りの刃から生まれたにもかかわらず、 その力は穏やかに世界を潤すものでした。
こうして、 石析神から闇御津羽神まで、 合わせて八柱の神々が生まれました。
伊耶那岐命の怒りは破壊ではなく、 新たな創造へと転じたのです。 御刀はただの武器ではなく、 神を生む器 となりました。その刃に宿る血は、 炎の死を越えて、 新しい命の光を放ち続けました。

伊耶那岐命(いざなぎのみこと)が十拳剣(とつかのつるぎ)を抜き、 火之迦具土神(かぐつちのかみ)の首を斬ったとき、 その刃は天と地を裂き、炎の神の命は大地へと散りました。
しかし―― その血と肉は滅びではなく、 新たな命の種となったのです。
斬られた迦具土神の身体から、 山々を象徴する八柱の神が生まれました。
◆頭から生まれた神
正鹿山津見神(まさかやまつみのかみ) その姿は高く聳える山の頂のよう。 天に最も近い神として、山々の霊気を司る。
◆胸から生まれた神
淤縢山津見神(おどやまつみのかみ)
胸の神は、山の豊かな森を象徴する。 命を育む緑の息吹をもたらす。
◆ 腹から生まれた神
奧山津見神(おくやまつみのかみ)
深き山の奥に潜む神。 静寂と神秘を守り、山の心臓を司る。
◆ 陰から生まれた神
闇山津見神(くらやまつみのかみ)
闇の山を統べる神。 霧と影の中に宿り、山の夜を守る。
◆ 左手から生まれた神
志藝山津見神(しぎやまつみのかみ)
風を呼び、山の斜面を撫でる神。 山の息吹を伝える。
◆ 右手から生まれた神
羽山津見神(はやまつみのかみ)
鳥のように軽やかに山を渡る神。 山の空気と風の流れを司る。
◆ 左足から生まれた神
原山津見神(はらやまつみのかみ)
山の裾野を広げる神。 大地と山の境を守る。
◆ 右足から生まれた神
戸山津見神(とやまつみのかみ)
山の入口を守る神。 人と神の世界を隔てる門の守護者。
こうして、 正鹿山津見神から戸山津見神まで、合わせて八柱 が生まれました。 それぞれが山の霊性を象徴し、 日本の山々に宿る神々の原型となったのです。炎の神の死は、破壊ではなく創造。 その身体は大地へ還り、 山々の命として再び息を吹き返しました。
伊耶那岐命が使った太刀の名は、 天之尾羽張(あめのおはばり)、 またの名を 伊都之尾羽張(いつのおはばり) といいます。その刃はただの武器ではなく、 神々を生む聖なる器。 怒りの刃が、世界の山々を生み出したのです。
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伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の二神は、国を生み終えたのち、さらに多くの神々をお生みになりました。
まずお生みになった神は、
大事忍男(おほこぼくおしを)、
次に石土毘古(いはつちびこ)、
次に石巣比売(いはすひめ)、
次に大戸日別(おほとひわけ)、
次に天之吹男(あめのふきを)、
次に大屋毘古(おほやびこ)、
次に風木津別之忍男(かざもつわけのおしを)、
次に海の神である大綿津見(おほわたつみ)、
次に水戸(港)の神である速秋津比古(はやあきつひこ)、
次に女神の速秋津比売(はやあきつひめ)をお生みになりました。
大事忍男から速秋津比売まで、合わせて 十神 でございます。
河と海を分担して生まれた八神
速秋津比古(はやあきつひこ)と速秋津比売(はやあきつひめ)の二神が、河と海を分担して次の神々をお生みになりました。
沫那芸(あわなぎ)と沫那美(あわなみ)、
次に頬那芸(つらなぎ)と頬那美(つらなみ)、
次に天之水分(あめのみくまり)と国之水分(くにのみくまり)、
次に天之久比奢母智(あめのくひざもち)と国之久比奢母智(くにのくひざもち)でございます。
沫那芸から国之久比奢母智まで、合わせて 八神 でございます。
風・木・山・野の四神
次にお生みになった神は、
風の神 志那都比古(しなつひこ)、
木の神 久久能智(くくのち)、
山の神 大山津見(おおやまつみ)、
野の神 鹿屋野比売(かやのひめ)、
またの名を野椎(のづち)といいます。
志那都比古から野椎まで、合わせて 四神 でございます。
山と野を分担して生まれた八神
大山津見(おおやまつみ)と野椎(のづち)の二神が、山と野を分担して次の神々をお生みになりました。
天之狭土(あめのさづち)と国之狭土(くにのさづち)、
次に天之狭霧(あめのさぎり)と国之狭霧(くにのさぎり)、
次に天之闇戸(あめのくらど)と国之闇戸(くにのくらど)、
次に大戸或子(おおとまとひこ)と大戸或女(おおとまとひめ)でございます。
天之狭土から大戸或女まで、合わせて 八神 でございます。
火之迦具土神の誕生と伊耶那美命の死
次にお生みになった神は、 鳥之石楠船(とりのいわくすふね)、またの名は天鳥船(あめのとりふね)でございます。 次に大宜都比売(おおげつひめ)をお生みになり、 次に火之夜芸速男(ひのやぎはやお)、またの名は火之炫毘古(ひのかがびこ)、またの名は火之迦具土(ひのかぐつち)をお生みになりました。
この火の神をお生みになったため、伊邪那美命(いざなみのみこと)は陰部を焼かれ、病の床に伏されます。
そのときの嘔吐物から金山毘古(かなやまびこ)と金山毘売(かなやまびめ)が現れました。
次に糞から波邇夜須毘古(はにやすびこ)と波邇夜須毘売(はにやすびめ)が現れ、
次に尿から弥都波能売(みつはのめ)と和久産巣日(わくむすひ)が現れます。
和久産巣日神の子として、食物を司る 豊宇気毗売神(とようけひめのかみ) が生まれました。
こうして、天鳥船神から豊宇気毗売神まで、合わせて八柱の神が生まれたことになります。
しかし、火の神を生んだことが原因で、伊耶那美命はついに命を落とし、あの世へと旅立たれました。
生まれた島と神々の総数
伊耶那岐命・伊耶那美命の二柱が共に生んだ島は 十四島、
共に生んだ神は 三十五柱 に及びます。
ただし、
意能碁呂島(おのごろしま) は生んだのではなく、矛の滴から生まれた島であること
蛭子(ひるこ) と 淡島(あわしま) は子として数えないこと
が特記されています。
これらはすべて、伊耶那美命が黄泉へ向かわれる前に生まれた神々です。
伊耶那岐命の深い悲しみと泣沢女神
伊耶那美命が亡くなったとき、伊耶那岐命は深い悲しみに沈み、
「愛しい我が妻よ、一人の子のために命を失うなどと思っただろうか」
と嘆き、枕元に伏し、足元に伏して泣き続けました。
その涙から生まれた神が、
泣沢女神(なきさわめのかみ) で、香山の畝尾の木の下に鎮まる神とされています。
伊耶那美命の葬り
亡くなった伊耶那美命は、
出雲国と伯伎国(伯耆国)の境にある比婆の山 に葬られました。
この地は、古来より「母なる神の眠る場所」として語り継がれています。
迦具土神を斬る ― 御刀から生まれた八神
伊耶那美命を死に至らしめた火之迦具土神(かぐつちのかみ)に怒り、伊耶那岐命(いざなぎのみこと)は身に帯びていた十拳剣(とつかのつるぎ)を抜き、その首を斬りました。
そのとき、御刀についた血が神聖な石の群に飛び散り、そこから次の神々が生まれました。
刀の先についた血から生まれた三神
石析神(いわさくのかみ)
根析神(ねさくのかみ)
石箇之男神(いわかのをのかみ)
刀の手元についた血から生まれた三神
甕速日神(みかはやひのかみ)
樋速日神(ひはやひのかみ)
建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)
別名:建布都神(たけふつのかみ)
別名:豊布都神(とよふつのかみ)
刀の柄に集まった血から生まれた二神
闇淤加美神(くらおかみのかみ)
闇御津羽神(くらみつはのかみ)
石析神から闇御津羽神まで、合わせて八柱が「御刀に因って生まれた神々」です。
迦具土神の身体から生まれた八神 ― 山の神々
斬られた迦具土神の身体からは、山々を象徴する八柱の神が生まれました。
頭から:正鹿山津見神(まさかやまつみのかみ)
胸から:淤縢山津見神(おどやまつみのかみ)
腹から:奧山津見神(おくやまつみのかみ)
陰から:闇山津見神(くらやまつみのかみ)
左手から:志藝山津見神(しぎやまつみのかみ)
右手から:羽山津見神(はやまつみのかみ)
左足から:原山津見神(はらやまつみのかみ)
右足から:戸山津見神(とやまつみのかみ)
正鹿山津見神から戸山津見神まで、合わせて八柱です。
これらは日本各地の山々の霊性を象徴する神々として、後の神話にも深く関わっていきます。
伊邪那岐(いざなき)が使った太刀の名は、 天之尾羽張(あめのおはばり) と申し、 またの名を 伊都之尾羽張(いつのおはばり) といいます。
山川草木の誕生
次に海をお生みになりました。
次に川をお生みになりました。
次に山をお生みになりました。
次に木の精である句句廼馳(くくのち)をお生みになりました。
次に草の精である草野姫(かやひめ)をお生みになりました。またの名を野の精といいます。
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊奘冉尊(いざなみのみこと)は相談して言われました。
「私は大八洲国(おおやしまのくに)や山川草木を生みました。そろそろ天下を治める者を生まなければならないでしょう」
そこでお二人は一緒に日の神をお生みになりました。大日孁貴(おおひるめのむち)といいます。別の言い伝えでは天照大神(あまてらすおおみかみ)といいます。
この御子は華やかに光り麗しく、国中を照らしました。それで二柱の神は喜ばれ、
「我が子たちはたくさんいるが、まだこんなに妖しく不思議な子はいない。長くこの国に留めておくのはよくない。早く天に送り、高天原(たかまがはら)の仕事をしてもらおう」
とおっしゃいました。
このとき、天と地はまだそれほど離れていませんでした。
そこで天御柱(あまのみはしら)をたどって、天上にお送りになりました。
次に月の神をお生みになりました。その光り麗しいことは太陽に次いでいました。
それで太陽と並んで治めるのがよいと判断し、これもまた天に送られました。
次に蛭児(ひるこ)をお生みになりました。三年経っても足が立ちませんでした。
そこで天磐櫲樟船(あめのいわくすふね)に乗せて、風のままに放流されました。
次に素戔嗚尊(すさのおのみこと)をお生みになりました。
この方は勇ましく荒々しく、残忍なことも平気でした。また常に泣きわめくことがありました。
それで国内の人々を多く若死にさせ、青山を枯山にしてしまいました。
そこで父母の二神は素戔嗚尊に、
「お前は大変無道である。だから天下を治めることはできない。遠い根の国に行きなさい」
と言って追放されました。
別の言い伝え(第一)
伊弉諾尊は、
「私は天下を治めるべきすべての子を生もうと思う」
とおっしゃり、左手で白銅鏡(ますみのかがみ)をお取りになったときに生まれた神が大日孁貴(おおひるめのむち)です。
右手で白銅鏡をお取りになったときに生まれた神が月弓尊(つくゆみのみこと)です。
また、首を回して後ろをご覧になったときに生まれたのが素戔嗚尊です。
このうち大日孁貴と月弓尊はともに人となりが麗しいので、天地を照らし治めさせられました。
素戔嗚尊は物を損ない壊すことを好んだため、下にくだして根の国を治めさせられました。
別の言い伝え(第二)
日と月が生まれたあとに蛭児が生まれました。
この子は三歳になっても足が立ちませんでした。
最初、伊弉諾尊と伊奘冉尊が柱を回られたとき、女神が先に喜びの言葉を言われました。
それが陰陽の道理にかなっていなかったために蛭児が生まれたのだといいます。
次に素戔嗚尊が生まれました。
この神は性質が悪く、常に泣いたり怒ったりしました。
国の人々が多く死に、青山を枯山にしました。
そこで両親は、
「もしお前がこの国を治めたら、きっと損ない破ることが多いだろう。だから遠い根の国を治めなさい」
と言われました。
次に鳥磐櫲樟船(とりのいわくすふね)を生み、この船に蛭児を乗せて放流しました。
次に火の神・軻遇突智(かぐつち)を生みました。
そのとき伊奘冉尊はいざなみのみことは火傷をしてお亡くなりになりました。
亡くなる際に、横たわったまま土の神・埴山姫(はにやまひめ)と、水の神・罔象女(みつはのめ)を生みました。
軻遇突智は埴山姫を娶って稚産霊(わくむすひ)を生みました。
この神の頭の上に蚕と桑が生じ、臍の中に五穀が生まれました。
別の言い伝え(第三)
伊奘冉尊が火産霊(ほむすひ)を生むとき、子のために焼かれて死にました。
死なれようとするときに、水の神・罔象女、土の神・埴山姫、また天吉葛(あまのよさつら)を生みました。
別の言い伝え(第四)
伊奘冉尊が火の神・軻遇突智を生もうとするとき、熱に苦しめられて嘔吐しました。
これが神となり、金山彦(かなやまひこ)といいます。
次に小便をされ、それが神となり、罔象女(みつはのめ)といいます。
別の言い伝え(第五)
伊奘冉尊が火の神を生むときに体を焼かれて亡くなりました。
紀伊国の熊野の有馬村に葬りました。
土地の人はこの神を花の季節に花をもって祭り、鼓・笛・旗をもって歌舞して祭ります。
別の言い伝え(第六)
伊弉諾尊と伊奘冉尊は協力して大八洲国を生みました。
そして伊弉諾尊が、
「我らの生んだ国は朝霧がかかっているが、良い香りがいっぱいだ」
と言って霧を吹き払われました。
その息が神となり、級長戸辺命(しなとべのみこと)、またの名を級長津彦命(しなつひこのみこと)といいます。これは風の神です。
また、飢えて気力のないときに生んだ子を倉稲魂命(うかのみたまのみこと)といいます。
生んだ海の神たちを少童命(わたつみのみこと)といいます。
山の神たちを山祇(やまつみ)といいます。
海峡の神たちを速秋津日命(はやあきつひのみこと)といいます。
木の神たちを句句廼馳(くくのち)といいます。
土の神たちを埴安神(はにやすのかみ)といいます。
そしてのちに万物が生まれました。
軻遇突智を斬ったときの神々
火の神・軻遇突智が生まれるとき、母の伊奘冉尊は身を焼かれてお隠れになりました。
伊弉諾尊は恨んで言われました。
「ただこの一人の子のために、我が愛妻を犠牲にしてしまった」
そして伊奘冉尊の頭や足のあたりを這いずり回って泣き悲しみ、涙を流されました。
その涙が神となり、啼澤女命(なきさわめのみこと)といいます。
伊弉諾尊は十握剣(とつかのつるぎ)を抜いて軻遇突智を三段に切りました。
その各々が神となりました。
剣の刃から滴る血が天の安河のほとりの岩群となり、これが経津主神(ふつぬしのかみ)の先祖です。
剣の鍔から滴る血が甕速日神(みかはやひのかみ)となり、次に熯速日神(ひのはやひのかみ)が生まれました。
熯速日神は武甕槌神(たけみかづちのかみ)の先祖です。
または甕速日命、次に熯速日命、次に武甕槌神が生まれたともいいます。
剣の先から滴る血が岩裂神(いわさくのかみ)、次に根裂神(ねさくのかみ)、次に磐筒男命(いわつつおのみこと)となりました。
ある言い伝えでは磐筒男命と磐筒女命(いわつつめのみこと)といいます。
剣の柄頭から滴った血が闇龗(くらおかみ)、次に闇山祇(くらやまつみ)、次に闇罔象(くらみつは)が生まれました。
再生の神・大物主神から授かった静かな恩恵。
潜在意識の深いところでゆっくり息を吹き返す、やさしい再生ヒーリングです。
眠りと覚醒のあわいで「意識の置き換え」と「癒し」がそっと芽生え、
心の奥の記憶や不安に寄り添いながら、
日々のストレスやトラウマを静かにほどいていきます。