龍神の記憶と目覚め  日本神話ー⑬大国主命伝説3(大国主命の恋物語)

日本神話ー⑬大国主命伝説3(大国主命の恋物語)

タグ:

創作物語版ー大国主命 いのちの旅物語ー

記紀に記載されている大国主命の話を創作物語としてまとめています。
記紀の現代語訳を読みたい方は後半をご覧ください。

第十六章 八上比売と木俣神― 木の股に残された子 ―

大国主神は、かつて自分を選んでくれた八上比売との約束を果たしました。

二人の間には子が生まれました。

しかし八上比売は、正妻である須勢理毗売命を恐れていました。

「この子を連れて帰らなくては……」

八上比売は、生まれた子を木の股にそっと置きました。

「ごめんなさい……」

「どうか、元気でいてください」

そして稲羽へ帰ってしまいました。

大国主神は残された子を見つめました。

「この子は……」

木の股に置かれていたことから、その子は、

木俣神(きまたのかみ)

と呼ばれるようになりました。

また、御井神(みいのかみ)とも呼ばれます。

木の中に残された小さな生命は、やがて神として語り継がれていったのです。

第十七章 八千矛神― 高志の国への旅 ―

大国主神には、もう一つの名がありました。

八千矛神(やちほこのかみ)です。

ある日、八千矛神は高志(こし)の国の美しい女神、沼河比売(ぬなかわひめ)のことを聞きました。

「高志に、美しい女神がいるという」

「ぜひ、会ってみたい」

八千矛神は旅立ちました。

山を越え。

野を越え。

海を越えて。

やがて沼河比売の家へ到着しました。

しかし、戸は閉じています。

八千矛神は戸の前に立ちました。

「沼河比売よ」

返事はありません。

そこで八千矛神は、恋の歌を歌い始めました。

「私は八千矛の神」

「広い国を巡っても、妻にしたい女神を見つけられなかった」

「けれど、高志の国に美しい女神がいると聞いた」

「だから私は、あなたに会うため、ここまで来たのです」

その時――

山から鵼(ぬえ)の声が聞こえます。

「ヒョー……」

野から雉(きじ)が鳴きます。

「ケーン!」

庭の鳥たちまで鳴き始めました。

八千矛神は困った顔をしました。

「こんな時に……」

「どうして鳥たちは、こんなに鳴くのだ」

八千矛神の恋歌は、夜の高志の国に響き渡りました。

第十八章 沼河比売の返歌― 開かない戸 ―

家の中で、沼河比売は八千矛神の歌を聞いていました。

胸が高鳴ります。

「なんて熱い歌……」

けれど、すぐには戸を開けません。

そして、静かに歌を返しました。

「八千矛の神の命よ」

「私は、萎え草のように頼りない女です」

「潮が満ちれば飛び立つ鳥のように、私の心も揺れています」

「今はまだ私自身の鳥」

「けれど、やがてはあなたの鳥となる身です」

「どうか、鳥たちを殺さないでください」

そして沼河比売は、さらに歌いました。

「青い山に日が沈めば、夜が来るでしょう」

「その時、朝日のような笑みを浮かべて、また私のもとへ来てください」

「白い腕を寄せ」

「柔らかな胸を重ね」

「玉のような手を取り合い」

「一緒に眠ることができるでしょう」

八千矛神は、戸の前で静かに耳を傾けました。

「……分かりました」

その夜、二人はまだ結ばれませんでした。

しかし、翌日の夜。

二人は正式に結ばれ、深い契りを交わしたのでした。

第十九章 須勢理毗売命の嫉妬― 愛する人との別れ ―

八千矛神が沼河比売と結ばれたことを知った須勢理毗売命。

その胸には、激しい嫉妬が燃えました。

「あなたは……」

「私のことを置いて、別の女神のところへ行ったのですか?」

八千矛神は答えに困りました。

「須勢理毗売命……」

「私は……」

「もういいのです」

須勢理毗売命は顔を背けました。

八千矛神は、深くため息をつきました。

「こうなったら……倭(やまと)へ行こう」

馬を用意しました。

鞍に手をかけます。

鐙に足をかけます。

そして、八千矛神は旅立ちの歌を歌いました。

黒い衣。

青い衣。

染め草で染めた衣。

何度も着替えながら、八千矛神は愛する妻のことを思いました。

「もし私が遠くへ行ってしまったら……」

「あなたは泣かないと言うでしょう」

「でも、本当は……」

「きっと泣くのでしょう」

須勢理毗売命は、その歌を聞いていました。

そして、二人の間にある愛の深さを、あらためて感じていたのです。

第二十章 大国主神の神々― 命をつなぐ血脈 ―

大国主神の物語は、ここで終わりません。

大国主神のもとには、多くの神々が生まれました。

胸形(むなかた)の奥津宮(おきつみや)の神である多紀理毗売命(たきりびめのみこと)との間には、

阿遅鉏高日子根神(あじすきたかひこねのかみ)。

そして、

高比売命(たかひめのみこと)。

高比売命は、また下光比売命(したてるひめのみこと)とも呼ばれます。

阿遅鉏高日子根神は、後に迦毛大御神(かものおおみかみ)として崇められます。

また、神屋楯比売命(かむやたてひめのみこと)との間には、

事代主神(ことしろぬしのかみ)。

事代主神は、父の国造りを助け、やがて国譲りの物語でも重要な役割を担います。

さらに、鳥取神(ととりのかみ)との間には、

鳥鳴海神(とりなるみのかみ)が生まれました。

その血脈は、さらに続いていきます。

国忍富神(くにおしとみのかみ)。

速甕之多気佐波夜遅奴美神(はやみかのたけさはやちぬみのかみ)。

甕主日子神(みかぬしひこのかみ)。

多比理岐志麻流美神(たひりきしまるみのかみ)。

美呂浪神(みろなみのかみ)。

布忍富鳥鳴海神(ふのおしとみとりなるみのかみ)。

天日腹大科度美神(あめのひばらおしなとみのかみ)。

そして、

遠津山岬多良斯神(とおつやまみさきたらしのかみ)。

幾世代もの神々が、命をつないでいきました。

古事記は、この長い系譜を「十七世の神(じゅうななよのかみ)」として伝えています。

神から神へ。

生命から生命へ。

大国主神の国造りの力は、次の世代へ受け継がれていったのです。

蛇神大物主神より授かりし神秘の恩恵
史上初!潜在意識の深海で甦る ― 奇跡の再生ヒーリング
大うつ病、不安、ストレス解消,自律神経失調症といったメンタル不調を瞬時に解消


精神科患者の8割が騙されている?精神医療の実態を知るおすすめ本

古事記現代語訳


八上比売との約束と、木俣神の誕生

その後、大穴牟遅神は、
かつて自分を選んだ稲羽の八上比売(やがみひめ)と、
約束通り契りを結びました。

しかし、八上比売は正妻である須勢理毗売命を畏れ、
自分が生んだ子を木の股に挟んで置き去りにし、国へ帰ってしまいます。

その子は
木俣神(きまたのかみ)
またの名を
御井神(みいのかみ)
と呼ばれるようになりました。
木の股に残された子が神となるというのは、
日本神話らしい、自然と生命の象徴的な描写ですね。

八千矛神、沼河比売への求婚
― 高志の国に響く恋の歌 ―


八千矛神(やちほこのかみ/大国主神)は、高志(こし)の国に住む沼河比売(ぬなかわひめ)に求婚しようとお出ましになりました。
沼河比売の家に到着すると、神は戸口に立ち、次のように歌って求婚なさいます。

八千矛神の恋歌

八千矛の神である私は、
八つの島々からなるこの国の中では、
妻とするにふさわしい女神を見つけることができませんでした。
けれども、国の果てにある遠い高志の国に、
聡明で美しい女神がいると聞きました。
繊細で、麗しい女神がいると聞きました。
その方に求婚するために旅立ち、
こうしてあなたの家に到着したのです。
まだ腰の大刀の緒も解かず、
上着も脱がないまま、
あなたの寝ている家の板戸を押して立っています。
引こうとして、また押そうとして、戸口に立っています。
すると、青々とした山の方で鵼(ぬえ)が鳴き、
山の麓の野原では雉が声を響かせ、
家の庭の鳥たちまで鳴き始めました。
なんと憎らしい、声を立てて鳴く鳥たちでしょう。
この鳥は、撃ち殺してしまいたいほどです。
いしたふや アマハセヅカイよ
――語り伝えられていることは、この通りなのです。
この歌は、
「あなたに会いたくて、急いで来た」
という情熱と、
「戸が開かないもどかしさ」
を、鳥の鳴き声に重ねて表現した、とても美しい恋歌です。

沼河比売の返歌
― 恥じらいと恋心が交差する夜 ―


八千矛神(やちほこのかみ/大国主神)が熱い恋歌を歌いかけても、
沼河比売はすぐには戸を開けず、
家の中から静かに、しかし深い想いを込めて歌い返します。

沼河比売の恋歌

八千矛の神の命よ。
私は、萎え草のように頼りない女の身でございます。
私の心は、
潮が満ちれば飛び立たざるを得ない、
海辺の州にいる鳥のようなものです。
今はまだ自分の鳥ですが、
いずれはあなたの鳥となる身なのですから、
どうか鳥たちを殺さないでくださいませ。

いしたふや アマハセヅカヒよ
――語り伝えられていることは、この通りでございます。
青い山に日が沈めば、
やがて夜が訪れるでしょう。
そうすれば、朝日のような笑みをたたえて、
あなたは私のもとへお越しになるでしょう。
栲綱(たくづな)のように白い腕を、
沫雪(あわゆき)のように柔らかい胸を、
そっと叩いて、叩いて愛しんでくださるでしょう。
玉のように美しい手を取り合い、
その手を枕にして、
足を長く伸ばして、
共に寝ることができるでしょうに。
どうか、むやみに恋しさを募らせてお急ぎなさらないでくださいませ。
八千矛の神の命よ。
語り伝えられていることは、この通りでございます。

そして、二人は翌夜に結ばれる
こうしてその夜は、
沼河比売は慎み深く戸を開けず、
婚姻は結ばれませんでした。
しかし翌日の夜、
二人は正式に結ばれ、
深い愛の契りを交わされたのです。

須勢理毗売命の嫉妬と、八千矛神の旅立ち
― 愛と別れの歌 ―


八千矛神(やちほこのかみ/大国主神)が高志の国の沼河比売(ぬなかわひめ)に求婚したことを知り、
正妻である須勢理毗売命(すせりひめのみこと)は深く嫉妬しました。
その嫉妬は激しく、
八千矛神は困り果ててしまいます。
そこで神は、
「今度は倭(やまと)の国の女神に求婚しよう」
と考え、出雲から旅立とうと身支度を整えました。
出発の時、
片方の手は馬の鞍にかけ、
片方の足は鐙(あぶみ)にかけたまま、
旅立ちの歌を静かに詠み始めます。

八千矛神の旅立ちの歌

ぬばたまのように黒い衣を
細やかに、正しく身につけてみます。
沖にいる鳥のように胸元を見て、
羽をぱたぱたさせるように動いてみても、
どうにも似合いません。
そこで、浜辺に寄せる波のように、
そっと脱ぎ捨てます。
次に、鴗鳥(ひたきどり)のような青い衣を
細やかに、正しく身につけてみます。

沖の鳥のように胸元を見て、
羽をぱたぱたさせてみても、
これもまた似合いません。
そこで、浜辺の波のように、
そっと脱ぎ捨てます。
最後に、山に蒔いた麻の実を搗いて染めた、
染め草の汁で染めた衣を
細やかに、正しく身につけてみます。

沖の鳥のように胸元を見て、
羽をぱたぱたさせてみると、
これはとてもよく似合います。
愛しい妻よ。
もし私が、群れ飛ぶ鳥のように
皆と一緒に遠くへ行ってしまったら。
もし私が、引かれる鳥のように
どこかへ連れて行かれてしまったら。
あなたは「泣きません」と言うかもしれませんが、
山の麓に立つ一本の薄(すすき)のように、
しおれて泣いてしまうでしょう。
その涙は、朝の空に立つ霧となって
漂うことでしょう。
若草のように美しい、私の妻よ。
語り伝えられていることは、この通りでございます。

国主神の系譜 ― 多くの神々を生み育てた物語

大国主神(おおくにぬしのかみ)は、国造りの神としてだけでなく、
多くの神々の父としても知られています。
ここでは、そのお子たちの系譜が語られています。
胸形の奥津宮の神・多紀理毗売命との間に生まれた神
阿遅鉏高日子根神(あじすきたかひこねのかみ)
次にその妹神である
高比売命(たかひめのみこと)
またの名を
下光比売命(したてるひめのみこと)
といいます。
阿遅鉏高日子根神は、現在では
迦毛大御神(かもおおみかみ)
として祀られています。
神屋楯比売命(かむやたてひめのみこと)との間に生まれた神
事代主神(ことしろぬしのかみ)
大国主神の国造りを助け、のちに国譲りで重要な役割を果たす神です。
八嶋牟遅能神(やしまむぢのかみ)の娘・鳥取神との間に生まれた神
鳥鳴海神(とりなるみのかみ)

この鳥鳴海神が、
日名照額田毗道男伊許知迩神(ひなてるぬかたひぢちおいこちにのかみ)を娶って生んだ子が、
国忍富神(くにおしとみのかみ)
国忍富神の子孫
国忍富神が、
葦那陀迦神(あしなだかのかみ)
またの名を 八河江比売(やがわえひめ)
を娶って生んだ子は、
速甕之多気佐波夜遅奴美神(はやみかのたけさはやちぬみのかみ)
この神が、天之甕主神(あめのみかぬしのかみ)の娘・前玉比売(さきたまひめ)を娶って生んだ子は、
甕主日子神(みかぬしひこのかみ)
甕主日子神が、淤加美神(おかみのかみ)の娘・比那良志毗売(ひならしひめ)を娶って生んだ子は、
多比理岐志麻流美神(たひりきしまるみのかみ)
この神が、
比比羅木之其花麻豆美神(ひひらぎのそのはなまずみのかみ)の娘・
活玉前玉比売神(いくたまさきたまひめ)を娶って生んだ子は、
美呂浪神(みろなみのかみ)
美呂浪神が、敷山主神(しきやまぬしのかみ)の娘・青沼馬沼押比売(あおぬまうまぬまおしひめ)を娶って生んだ子は、
布忍富鳥鳴海神(ふのおしとみとりなるみのかみ)
この神が、若尽女神(わかつくしめのかみ)を娶って生んだ子は、
天日腹大科度美神(あめのひばらおしなとみのかみ)
この神が、天狭霧神(あめのさぎりのかみ)の娘・遠津待根神(とおつまちねのかみ)を娶って生んだ子は、
遠津山岬多良斯神(とおつやまみさきたらしのかみ)
「十七世の神」とは
ここまでに述べられた、
八嶋士奴美神(やしましぬみのかみ)から、遠津山岬多良斯神まで
の神々を、古事記では
「十七世の神(じゅうななよのかみ)」
と呼びます。
大国主神の血脈が、
国造りの神々として長く続いていくことを示す系譜です。

日本書紀現代語訳

The following two tabs change content below.
空海が育った善通寺の近くで生まれ、愛媛県で育ちました。 国立理系大学院を修了後は、大手半導体メーカーで研究開発エンジニアとして勤務し、CPU基盤材料や太陽電池材料の研究に携わっていました。 関西在住時、うつ病療養のために何度か訪れた奈良・大神神社(大物主神を祀る古社)で、不思議な体験をしたことが転機となります。 その出来事をきっかけに記紀を読み始め、十年後、自身の祖先が宇佐八幡初代神官・大神比義、さらには大神神社(地祇系三輪・大神氏)へと連なる「蛇神族の神官系の血流」であることを突きとめました。 また、20年間どの療法でも改善しなかった難治性うつ病が、瞑想と催眠の研究を続ける中で奇跡的に解消し、人間に本来備わる自然治癒力の発動法を見出しました。 その後、独自のヒーリング法を確立し、5年間にわたり精神疾患を抱える方々への対面施術・指導を行いましたが、コロナ禍を機に現場を引退。現在はサイトを立ち上げ、HSP向けのセルフヒーリングをオンラインで提供しています。 自身の経験から、 「この世界では、時に説明のつかない出来事が起こり、奇跡が起こることがある」 というメッセージを蛇神の血筋として伝えていきたいと考えています。 なお、宗教団体とは一切関係ありません。
「神話の旅」一覧に戻る トップに戻る