記紀に記載されている国譲り(葦原中国平定)を創作物語としてまとめています。
記紀の現代語訳を読みたい方は後半をご覧ください。

しかし、国譲りの使命は、まだ終わっていません。
高天原では、天照大御神と高御産巣日神が、再び八百万の神々を集めていました。
天若日子も戻ってこなかった。
二人の使者を送りましたが、国譲りは進みません。
天照大御神が仰います。
「では、次に誰を遣わせればよいでしょう。」
神々は慎重に相談しました。
やがて、思金神が答えます。
「天の安河の上流、天の石屋におられる、**伊都之尾羽張神(いつのおはばりのかみ)**がよいでしょう。」
「もし難しければ、その御子である**建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)**を遣わすのがよいでしょう。」
しかし――。
伊都之尾羽張神のもとへ行くには、一つの問題がありました。
「天の安河の水を逆流させ、道を塞いでいるため、近づくことができません。」
そこで神々は言いました。
「まず、**天迦久神(あめのかくのかみ)**を遣わして、意向を尋ねましょう。」
こうして、最後の使者をめぐる物語が動き始めます。

天迦久神は、天尾羽張神のもとへ向かいました。
「天照大御神と高御産巣日神がお尋ねです。」
「葦原中国へ使者として赴いていただけないでしょうか。」
天尾羽張神は、静かに答えました。
「恐れ多いことです。」
「お仕えいたしましょう。」
しかし、少し考えてから続けます。
「けれども……。」
「この役目には、私の子を遣わすのがよいでしょう。」
その名は――。
建御雷神(たけみかづちのかみ)。
強大な武威を持つ神です。
天尾羽張神は、我が子を天へ送り出しました。
こうして、ついに国譲りの交渉を担う最強の使者が決まりました。
天照大御神は建御雷神に命じました。
「葦原中国へ向かいなさい。」
そして、建御雷神には**天鳥船神(あめのとりふねのかみ)**が副えられました。

二柱は天から地上へ降り、出雲国の伊耶佐(いやさ)の小浜へ到着します。
海は静かでした。
しかし、その浜辺に降り立った建御雷神の姿には、これまでの使者とは違う凄みがありました。
建御雷神は十掬剣を抜きました。
そして――。
その剣を波の上に逆さまに突き立てます。
その剣先に、胡座をかいて座りました。
「大国主神よ。」
「天照大御神と高木神の命を伝えるために来た。」
海風が吹き抜けます。
国譲りをめぐる、最後の交渉が始まろうとしていました。

建御雷神は、大国主神の前に立ちました。
「大国主神。」
「天照大御神と高木神のお言葉を伝えます。」
「あなたが治めている葦原中国は、天つ神の御子が治めるべき国として定められています。」
「あなたの心は、どうですか。」
大国主神は、すぐには答えませんでした。
長い沈黙の後、静かに口を開きます。
「私一人の考えで答えることはできません。」
建御雷神が尋ねます。
「では、誰に尋ねるのですか。」
大国主神は答えました。
「私の子、**八重事代主神(やえことしろぬしのかみ)**です。」
「しかし、今は御大(みほ)の岬へ出かけています。」
建御雷神は天鳥船神に命じました。
「では、呼び戻してきなさい。」
天鳥船神は、すぐに御大の岬へ向かいました。

やがて事代主神が戻ってきました。
建御雷神は問いかけます。
「あなたの父、大国主神が治めるこの国を、天つ神の御子に譲ることについて、どう考えますか。」
事代主神は、静かに父を見つめました。
そして答えます。
「恐れ多いことです。」
「この国は、天つ神の御子に献り奉りましょう。」
大国主神は黙って息子の言葉を聞いていました。
事代主神は、自分の乗っていた船を踏み傾けました。
そして、**天の逆手(あまのさかて)**を打ち、青柴垣(あおふしがき)をめぐらせるようにして、その姿を隠しました。
それはまるで――。
「私はもう、国政には関わりません。」
そう告げているかのようでした。
しかし、建御雷神はさらに尋ねます。
「ほかに、あなたの子で申すべき者はいますか。」
大国主神は答えました。
「もう一人います。」
「**建御名方神(たけみなかたのかみ)**です。」
その瞬間――。
遠くから、大地を揺るがすような音が聞こえてきました。

建御名方神が姿を現しました。
その手には、巨大な千引石(ちびきのいし)。
まるで大岩を軽々と持ち上げているようでした。
「誰だ!」
建御名方神は建御雷神を見据えます。
「我が国へやって来て、ひそひそと何を話しているのだ。」
そして、堂々と言い放ちました。
「そのようなことを言うのなら――。」
「力比べをしようではないか!」
建御雷神は静かに手を差し出しました。
「よいでしょう。」
建御名方神が、その手を握ります。
その瞬間――。
建御雷神の手が、冷たい氷柱のように変わりました。
さらに、鋭い剣の刃のようになります。
「な……!」
建御名方神は驚いて手を引きました。
今度は建御雷神が、建御名方神の手を握ります。
すると――。
若い葦を引き抜くかのように、建御名方神を軽々と掴み上げました。
「うわっ!」
建御名方神は投げ飛ばされました。
「まだだ!」
建御名方神は逃げます。
建御雷神は追います。
野を越え、山を越え――。
ついには、科野(しなの)の国、諏訪の湖まで追い詰められました。

諏訪の湖。
逃げ場を失った建御名方神は、ついに建御雷神の前にひざまずきました。
「恐れ多いことです。」
「どうか、私を殺さないでください。」
「私は、この地から他の場所へは行きません。」
建御雷神は黙って見つめています。
建御名方神は続けました。
「父、大国主神の仰せにも背きません。」
「兄、事代主神の言葉にも異はありません。」
「葦原中国は、天つ神の御子の御命令のままに献り奉ります。」
こうして、建御名方神は降伏しました。
そして、諏訪の地に留まることを誓ったのです。
長い国譲りの交渉は、いよいよ最後の段階へ入っていきました。

建御雷神は、再び大国主神のもとへ戻りました。
「あなたの二人の子は、天つ神の御子に従うと申しました。」
「では、あなた自身の心はどうですか。」
大国主神は、静かに目を閉じました。
長い年月をかけて、自らが築いてきた国。
多くの神々とともに育ててきた国。
その国を、今、手放そうとしているのです。
やがて大国主神は目を開きました。
そして、穏やかに答えます。
「私の子らが申した通りです。」
「私の心にも異なるところはありません。」
「この葦原中国は、すべて献り奉りましょう。」
そして、大国主神は一つだけ願いを述べました。
「ただし……。」
建御雷神が耳を傾けます。
「私が退く場所を、立派な宮としていただきたいのです。」
「天つ神の御子が天つ日嗣を継いで治められる宮殿のように。」
「地の底深くまで届くほど、太い宮柱を立ててください。」
「そして、千木を高天原に届くほど高くそびえさせてください。」
「その宮に私は身を隠し、目に見えない世界から、この国を見守りましょう。」
大国主神は、最後にこう続けました。
「私の子ら百八十神も、八重事代主神が先頭と後尾に立って仕えるならば、誰一人として逆らうことはありません。」
建御雷神は、その言葉を受け止めました。
こうして、大国主神は国を譲る決意を固めたのです。

大国主神は、出雲国の多芸志(たぎし)の小浜に、天つ神を迎えるための御殿を建てました。
調理を司る神には、水戸神(みなとのかみ)の孫、**櫛八玉神(くしやたまのかみ)**が選ばれました。
櫛八玉神は海へ向かいます。
そして――。
鵜(う)の姿となって海へ潜りました。
海底の粘土をくわえて戻ってくると、それを使って天の器を作ります。
さらに海藻の茎を刈り取り、火を熾すための臼と杵を作りました。
そして、大国主神は自ら火を鑽り出しました。
赤々とした炎が燃え上がります。
その炎を見つめながら、大国主神は誓いました。
「この火を、高天原では神産巣日御祖命(かみむすびのみおやのみこと)の新しい御殿にまで届くほど盛んに焚き上げましょう。」
「地の底では、大きな磐に届くほどに燃え続けるでしょう。」
「そして、長い縄を張りめぐらし、海人たちが大きな鱸を引き上げ、豊かな魚料理を天つ神に献上しましょう。」
それは、大国主神の最後の誓いでした。
「私は天つ神に従います。」
「地上の国を献上します。」
「そして、目に見えない世界の主として、この国を守りましょう。」
燃え上がる火が、その誓いを照らしていました。

すべての言葉を受け取った建御雷神は、天へ戻ることになりました。
出雲の地を離れ、高天原へ帰っていきます。
そして、天照大御神と高御産巣日神の前に進みました。
「ご報告いたします。」
「葦原中国を言向け和し、平定いたしました。」
天照大御神は、静かにうなずかれました。
こうして――。
長く続いた国譲りの物語は、ついに終わりを迎えました。
天忍穂耳命の派遣。
天菩比神の失敗。
天若日子の悲劇。
雉の鳴女。
還り矢。
下照比売の嘆き。
阿遅志貴高日子根神の怒り。
そして、建御雷神と建御名方神の力比べ。
数々の出来事を経て、大国主神は国を譲りました。
しかし、それは単なる敗北ではありませんでした。
大国主神は、自らが築いた国を天つ神へ託し、自らは目に見えない世界へ退いて、なお国を見守る存在となったのです。
こうして、「豊葦原の瑞穂の国」は、天照大御神の御子が治める国へと引き継がれていきます。
そして、この国譲りの先に待っていたのが――。
天孫降臨(てんそんこうりん)。
天照大御神の御子孫、邇邇芸命(ににぎのみこと)が、ついに高天原から地上へ降り立つ物語でした。
天と地を結ぶ大きな神話は、次の舞台へと続いていくのです。
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天若日子の死を経て、
天照大御神(あまてらすおおみかみ)は再び八百万の神々にお尋ねになります。
「では、次にどの神を派遣すればよいでしょう。」
思金神(おもいかねのかみ)と諸神は申し上げました。
「天の安河(あまのやすのかわ)の上流、
天の石屋(いわや)におられる
伊都之尾羽張神(いつのおはばりのかみ) を派遣するのがよいでしょう。
もしこの神が難しければ、
その御子である
建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ) を派遣するのがよいでしょう。」
さらに神々は続けます。
「しかし、天尾羽張神は、
天の安河の水を逆流させて堰き止め、
道を塞いでおられます。
そのため、他の神は近づくことができません。
ですので、まず 天迦久神(あめのかくのかみ) を遣わして
意向を伺うのがよいでしょう。」
天迦久神、天尾羽張神のもとへ
天迦久神が天尾羽張神に意向を尋ねると、
天尾羽張神はこう答えました。
「恐れ多いことです。
お仕えいたしましょう。
しかし、この道には、
私の子である 建御雷神 を遣わすのがよいでしょう。」
こうして、天尾羽張神は
建御雷神を天界へ献上しました。
建御雷神、天鳥船神とともに出雲へ
天照大御神は、
建御雷神に 天鳥船神(あめのとりふねのかみ) を副えて派遣しました。
この二柱の神は、
出雲国の 伊耶佐(いやさ)の小浜 に降り立ちます。
建御雷神は十掬剣(とつかのつるぎ)を抜き、
逆さまに波の上へ突き立て、
その剣の先に胡座をかいて座りました。
この姿は、
「武力をもって来た」
という強烈な意思表示です。
大国主神との対面
建御雷神は大国主神に向かって言いました。
「天照大御神・高木神のお言葉により、
あなたに尋ねに参った。
あなたが領有している葦原中国(あしはらのなかつくに)は、
我が御子が統治すべき国として
天照大御神が委任された国である。
それについて、
あなたの心はどうであるか。」
大国主神、まずは事代主神に判断を委ねる
建御雷神(たけみかづちのかみ)が
「葦原中国(あしはらのなかつくに)を天つ神の御子に譲るか」
と問いかけた時、大国主神は答えました。
「私は申し上げることができません。
私の子である 八重事代主神(やえことしろぬしのかみ) が
お答えするはずです。
しかし、事代主神は御大の岬に行っており、
まだ戻っておりません。」
そこで建御雷神は、
天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を岬へ遣わし、
事代主神を呼び戻させました。
事代主神の返答 ― 国を献上する決意
事代主神は建御雷神の問いに答え、
父・大国主神に向かってこう言いました。
「恐れ多いことです。
この国は、天つ神の御子に献り奉りましょう。」
そう言うと、
事代主神は乗っていた船を踏み傾け、
天の逆手(あまのさかて) を青柴垣に変えて姿を隠しました。
これは、
「自分はもう国政に関わらない」
という意思表示です。
次に呼ばれたのは建御名方神
建御雷神は大国主神に尋ねます。
「今、事代主神はこのように申し終えた。
他に申すべき子はいるか。」
大国主神は答えました。
「他には、我が子 建御名方神(たけみなかたのかみ) がいます。
この子以外にはおりません。」
その時、建御名方神が現れ、
千引石(ちびきのいし) を手に持ちながら言いました。
「誰が我が国に来て、
ひそひそとこのようなことを言っているのか。
そのように言うのならば、
力比べをしようではないか。
まずは私が、お前の手を取ろう。」
力比べ ― 建御雷神の圧倒的な力
建御雷神は手を差し出し、
建御名方神に握らせました。
すると建御雷神の手は
・氷柱(つらら)
・剣の刃
へと変化し、
建御名方神は恐れをなして後退しました。
次に建御雷神が建御名方神の手を取ると、
若い葦を引き抜くように
軽々と掴み取り、投げ飛ばしました。
建御名方神は逃げ出し、
建御雷神は追いかけ、
ついに 科野(しなの)の国・諏訪の湖 まで追い詰めました。
建御名方神の降伏
建御名方神は震えながら申し上げました。
「恐れ多いことです。
どうか私を殺さないでください。
私はこの地から他の場所へは行きません。
また、父・大国主神の仰せに背くこともありません。
事代主神の言葉にも異はございません。
この葦原中国は、
天つ神の御子の御命令のままに献り奉ります。」
こうして建御名方神は降伏し、
諏訪の地に留まることを誓いました。
大国主神、ついに心を決める
建御雷神(たけみかづちのかみ)は、
事代主神(ことしろぬしのかみ)と建御名方神(たけみなかたのかみ)の
二柱の返答を受けて、再び大国主神に問いかけました。
「お前の子ら二柱は、
天つ神の御子のお言葉に背くところはないと申し上げた。
では、お前自身の心はどうであるのか。」
大国主神は静かに答えました。
「私の子らが申し上げた通り、
私の心にも異なるところはありません。
この葦原中国(あしはらのなかつくに)は、
お言葉に従ってすべて献り奉りましょう。」
大国主神のただ一つの願い
大国主神は続けて、
自らの退き場所について願いを述べます。
「ただ、私が住む場所は、
天つ神の御子が天つ日嗣(あまつひつぎ)を継いで治められる
満ち足りた天の御殿のように、
地の底深くの大きな磐に宮柱を太く立て、
千木を高天原に届くほど高くそびえさせた立派な宮を
お造りいただきたいのです。
そうしていただけるならば、
私は百足らず八十(ももたらずやそ)――
多くの道の奥深く、
人の目に触れぬ世界に隠れてお仕えいたしましょう。」
さらに大国主神は続けます。
「また、私の子ら百八十神は、
八重事代主神がその先頭と後尾に立って仕えるならば、
誰一人逆らう神はおりません。」
出雲国・多芸志の小浜に天神を迎える御殿を建てる
大国主神はこう申し上げると、
出雲国の 多芸志(たぎし)の小浜 に
天つ神を迎えるための御殿を建てました。
調理を司る神として
水戸神(みなとのかみ)の孫・櫛八玉神(くしやたまのかみ) を任じ、
天つ神に食事を献じる際には祝詞を奏しました。
櫛八玉神は鵜(う)となって海に潜り、
海底の粘土をくわえて持ち帰り、
多くの天の器を作りました。
また、海藻の茎を刈り取って
火を熾すための臼と杵を作りました。
大国主神、火を鑽り出して誓う
大国主神は火を鑽り出し、こう宣言します。
「この私が鑽った火は、
高天原では神産巣日御祖命(かみむすびのみおやのみこと)の
満ち足りた新しい御殿に
煤が長く垂れるほどに焚き上げ、
地の底では大きな磐に届くまで焼き固め、
栲縄(たくなわ)の千尋(ちひろ)もある長い縄を張りめぐらし、
釣りをする海人が、
口の大きな鱸(すずき)をざわざわと引き上げ、
打竹がしなるほどの量の魚料理を
天つ神に献上いたします。」
これは、
「私は天つ神に従い、
地上の国を献上し、
幽界の主として仕えます」
という大国主神の誓いです。
建御雷神、高天原へ帰還
こうして建御雷神は高天原へ戻り、
「葦原中国を言向け和し、平定した」
と報告しました。
これが、
国譲りの成就
です。
経津主神と武甕槌神の派遣
その後、高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)は再び諸神を集め、葦原中国に遣わす者を選びました。
皆は言いました。
「磐裂根裂神(いわさくねさくのかみ)の子で、磐筒男(いわつつのお)・磐筒女(いわつつのめ)が生んだ経津主神(ふつぬしのかみ)が良いでしょう。」
すると、天石屋(あまのいわや)に住む稜威雄走神(いつのおはしりのかみ)の子である甕速日神(みかはやひのかみ)、その子の熯速日神(ひのはやひのかみ)、その子の武甕槌神(たけみかつちのかみ)が進み出て、
「どうして経津主神(ふつぬしのかみ)だけが良くて、自分はダメなのだ」
と言いました。
語気が激しかったため、経津主神(ふつぬしのかみ)に添えて、共に葦原中国に遣わされました。
大己貴神の国譲り
二柱の神は出雲(いずも)の五十田狭(いたき)の小汀(おはま)に降り、十握剣を逆さに突き立て、その先に膝を立てて座り、大己貴神(おおなむちのみこと)に問いました。
「高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)が皇孫を降らせ、この地を治めようと思っておられる。お前は国を譲るか、否か。」
大己貴神(おおなむちのみこと)は、
「私の子に相談して返事をいたしましょう」
と言いました。
その子である事代主神(ことしろぬしのかみ)は出雲の美保の崎(みほのさき)で釣りをしていました。
熊野の諸手船に稲背脛(いなせはぎ)を乗せて使者とし、事代主神(ことしろぬしのかみ)に伝えました。
事代主神(ことしろぬしのかみ)は言いました。
「今回の天つ神(あまつかみ)の言葉には、父上は抵抗しない方がよいでしょう。私も逆らいません。」
そして波の上に青柴垣を作り、海中に退去しました。
使者が報告すると、大己貴神(おおなむちのみこと)は言いました。
「頼みとした子はもういない。だから私も身を引こう。もし私が抵抗すれば、国内の神々も戦うだろう。今私が退けば、誰も戦わない。」
そして国を平定した広矛を二神に奉り、
「私はこの矛で事を成し遂げた。天孫がこれを用いれば国は平安になるでしょう。私は今から幽界に参ります。」
と言って隠れました。
二神は従わない神々を成敗し、邪神や草木・石に至るまで平げました。
従わなかったのは星の神・香香背男(かかせお)だけでしたが、建葉槌命(たけはつちのみこと)を遣わして屈服させました。
そして二神は天に上って復命しました。