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長年うつを患っていると、身体が無意識に緊張し続け、全身ががちがちに固まってしまうように感じます。毎日お風呂に浸かって、もみほぐしたりストレッチをしたりする日々を過ごしていました。
子供の頃から夫婦喧嘩の絶えず、毎日が緊張しっぱなしの環境だったので、大人になってからも無意識に人一倍あがりやすく筋肉が萎縮していたようです。
頭皮や足ツボを押すと、血行が悪いせいか、軽く指で触れるだけでもとても痛いのです。
そのため、ツボを押して緊張をほぐしながら、毎日1時間ほど湯舟に浸かっていました。
その成果もあってか、だいぶ緊張感も取れては来ていた感じです。
長年シャワーだけで済ませていたので、お風呂に浸かることがこんなに気持ちよいとは思いませんでした。毎日竹炭を入れて、泡ぶろにしてブクブクさせ、香りを楽しむのがたまらない至福のひと時になっていました。
お風呂に浸かっていると、
「そういえば、あんまり温泉いってないな」
とふと気づき、近場の有馬温泉にいくことにしたのでした。
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有馬温泉は六甲山の裏側。
「三宮駅」から、地下鉄北神線に乗って「谷上駅」で有馬線に乗り換えて「有馬温泉駅」で下車。
三宮駅から30分程度で到着します。
有馬温泉は、岐阜の「下呂温泉」、群馬の「草津温泉」と並んで日本三大名湯に数えられる、由緒ある温泉地です。 古くは『日本書紀』にもその名が記され、千年以上の歴史を持つ“日本最古級の温泉”として知られています。
戦国時代には、羽柴秀吉が中国攻めの総司令官として各地を転戦する中、戦の疲れを癒やすために何度も訪れたと伝えられています。秀吉は特に有馬の湯を気に入り、湯治のために長期滞在したこともあったそうです。そのため、温泉街には秀吉ゆかりの史跡や伝承がいくつも残され、歴史好きにはたまらない雰囲気が漂っています。
有馬温泉の源泉は、地中深くに染み込んだ水分が火山のマグマの熱によって温められ、それが長い年月をかけて地表へと湧き出してきたものです。 鉄分を多く含んだ赤褐色の「金泉」、透明で炭酸を含む「銀泉」など、泉質の違いがはっきりしているのも特徴で、古来より“薬の湯”として重宝されてきました。
昼過ぎにのんびり家を出て、有馬温泉に到着したのは15時頃でした。
駅を降りた瞬間、六甲山の裾野に抱かれるように広がる温泉街は、山の静けさと湯けむりの匂いが混ざり合い、都会とはまったく違う時間の流れがありました。
六甲山あたりは、おしゃれな建物が多いのですが、駅前から続く道には、木造のレトロな旅館や、昔ながらの佇まいを残したお土産店が軒を連ねています。 湯気が立ちのぼる温泉まんじゅうの店、炭酸せんべいを焼く香ばしい匂い、川のせせらぎの音、そして山の冷たい空気——それらが一度に押し寄せてきて、「あぁ、温泉地に来たんだ」と身体がゆっくりと実感していきます。
温泉に浸かる前に、まずは周囲を歩いてみることにしました。 石畳の坂道を上り下りしながら、湯けむりの立つ路地や、古い木造建築の旅館、赤い橋のかかる川沿いの道などを眺めていると、まるで時間が少し巻き戻ったような、不思議な懐かしさが胸に広がります。

有馬温泉の街並みを歩いていると、思っていた以上に坂道が多いことに気づきます。 細い路地が斜面に沿って折れ曲がり、石畳の坂が上へ下へと続いていく——まさに山の温泉街らしい起伏のある地形です。歩くたびに視界が少しずつ変わり、坂の途中からは屋根越しに温泉街全体が見渡せたり、遠くに六甲山の稜線がのぞいたりします。
坂を上へ上へと登っていくと、ふいに視界が開け、「炭酸泉源広場」という小さな広場にたどり着きました。 木々に囲まれた静かな場所で、観光客のざわめきから少し離れたせいか、空気がひんやりと澄んでいます。広場の中央には、かつて炭酸泉が湧き出していた源泉跡があり、今もその名残を感じさせる石造りの設備が残されています。

有馬温泉の名物である「銀泉」は、この炭酸泉がルーツ。 かつてはここから自然に炭酸を含んだ湯が湧き出し、地元の人々が飲泉や湯治に利用していたそうです。 今は湧出量が減ってしまったものの、広場には炭酸泉の歴史を伝える案内板があり、当時の様子を想像しながら歩くと、どこか時間旅行をしているような気分になります。
温泉がポコポコを湧き上がっていますが、このお湯は二酸化炭素温泉。
温度は18.6℃と意外に低温です。


炭酸水といえば、やはり思い浮かぶのはサイダーです。 有馬温泉の炭酸泉は、かつて砂糖を加えて飲まれていたそうで、ここが日本で最初に生まれた“国産オリジナルサイダーの素”とも言われています。
また、有馬名物として知られる「炭酸せんべい」も、この炭酸泉を利用して明治40年頃から作られ始めたものです。 パリッと軽く、ほんのり甘い素朴な味わいで、温泉街のあちこちで焼きたての香りが漂っています。
……とはいえ、私はお餅と団子には目がないものの、せんべいにはあまり興味が湧かないので、食べるのを忘れていました。
せんべいは食べてもお腹が満たされた気分がしないもので。
今思えばとても後悔しています。

山の方へふと目を向けると、斜面の上に何やら“城のようなもの”が見えました。 こんな場所に城跡があるのかと気になり、調べてみると、それは「落葉山城(おちばやまじょう)」と呼ばれる城跡でした。
築城した人物についてははっきりとした記録が残っておらず、誰が最初にこの山上に城を構えたのかは謎のままです。 しかし戦国時代には、有馬温泉を支配していた有馬氏がこの城を居城として利用していたと伝わっています。山の上に築かれた城は、温泉街を見下ろす位置にあり、周囲の動きを把握するには絶好の場所だったのでしょう。
1579年、織田信長の嫡男・信忠が率いる軍勢がこの地に攻め寄せ、落葉山城は激しい戦いの末に落城したとされています。

有馬温泉の山手に広がる谷あいには、かつて温泉の成分が強すぎるために“毒水”が湧き出ていた場所があったそうです。 その池の水を鳥や虫が誤って飲むと、苦しんで死んでしまうことがあり、人々はいつしかこの一帯を「地獄谷」、「鳥地獄」、「虫地獄」と呼ぶようになったと伝えられています。
温泉地には“地獄”の名がつく場所が多いですが、有馬も例外ではありません。 箱根の大涌谷、別府の地獄めぐりなど、どこも火山の力がむき出しになったような荒々しい景観が広がり、自然の恐ろしさと神秘を同時に感じさせます。
有馬の地獄谷も、かつては硫黄の匂いが立ちこめ、湯気がもうもうと立ち上る光景が広がっていたのでしょう。 あの強烈な硫黄の匂い——まるで“地獄の釜の蓋が開いた”ような、鼻をつくおならのような臭い——は、温泉地ならではのものです。 人々が恐れと畏敬を込めて「地獄」と呼んだのも、なんとなく納得してしまいます。

坂道をさらに登り、頂上付近まで来ると、鳥居が静かに佇む「有馬稲荷神社」に到着します。 山の空気が少しひんやりとしていて、下の温泉街の賑わいが遠くに感じられるほど、ここは落ち着いた雰囲気に包まれています。
有馬稲荷神社の起源は古く、舒明天皇や孝徳天皇が有馬温泉へ行幸された際、この地に「有馬行宮(ありまのかりみや)」が造営されたことに始まると伝えられています。 行宮とは、天皇が旅先で滞在する仮の御所のことです。その行宮を守護するために祀られたのが、この稲荷神社の始まりとされています。
つまり、この場所は単なる温泉地の一角ではなく、古代の天皇が実際に訪れ、滞在した歴史を持つ特別な地なのです。 温泉の湯けむりが立ちのぼる山あいに、天皇の行宮があったという事実を思うと、どこか神秘的な気配が漂っているようにも感じられます。

鳥居をくぐると、山の静けさと木々のざわめきが心に染み込み、旅の途中でふと立ち止まって深呼吸したくなるような、そんな穏やかな空間が広がっていました。

この有馬稲荷神社からは、有馬温泉の街並みを一望できます。
山の斜面に寄り添うように広がる温泉街が、まるで箱庭のように足元に広がり、赤い屋根の旅館や細い路地、湯けむりの立つあたりまで見渡せます。

社殿の中から外の景色を眺めると、まるで世界が一段階静かになったように感じられます。 木枠の向こうに広がる山の緑や、遠くに見える温泉街の屋根が、額縁に収められた絵のように見え、どこか神秘的な雰囲気が漂っています。
薄暗い社の内部と、外の明るい景色とのコントラストが強く、まるで自分が“こちら側の存在”ではなく、少しだけ神に近づいたような、不思議な気分になります。

この有馬稲荷神社も、紅葉の名所として知られています。 境内の周囲にはカエデやモミジが多く植えられており、秋になると山の斜面一帯が赤や黄色に染まり、まるで神社そのものが紅葉に包まれているように見えます。
鳥居の朱色と、紅葉の赤が重なる景色は、まさに“秋の神域”といった趣があります。 風が吹くたびに葉がひらひらと舞い落ち、足元には自然がつくった赤い絨毯が広がっていました。

一通り周辺を散策し終えて、いよいよ旅のメインディッシュである温泉へ向かいます。 今回選んだのは、有馬温泉の名湯を一度に楽しめる「太閤の湯」です。 ここでは、有馬を代表する三つの泉質——金泉・銀泉・炭酸泉——をすべて堪能できます。
金泉は、鉄分と塩分を豊富に含んだ赤茶色のお湯で、湯面がとろりと濁っているのが特徴です。 身体を沈めると、じんわりと温かさが染み込み、まるで全身が包み込まれるような感覚になります。鉄の香りがふわりと漂い、「これぞ有馬の湯だ」と実感させられます。
一方、銀泉は無色透明で、さらりとした肌触りのお湯です。 炭酸を含む炭酸泉と、ラドンを含む放射能泉の二種類があり、金泉とはまた違った軽やかな心地よさがあります。 湯に浸かっていると、身体の表面がふっと軽くなるような、不思議な爽快感がありました。
金泉でじっくり温まり、銀泉で身体を整え、炭酸泉でリフレッシュする—— そんな贅沢な温泉リレーを楽しんでいるうちに、時間はあっという間に過ぎていきます。
仕上げにマッサージも受け、全身のこわばりがゆるゆると溶けていくのを感じながら外へ出ると、すでに空は真っ暗になっていました。 温泉街の灯りがぽつぽつとともり、湯上がりの身体に夜風が心地よく、なんとも言えない満足感に包まれました。