目次
ウバイド期は、メソポタミア文明の基盤が形づくられた時代です。
人々は湿地帯を開拓し、灌漑農業を発展させ、エリドゥやウルといった初期の神殿都市が生まれました。社会はまだ平和的で、身分差も小さく、共同体が協力して大地を耕していたと考えられています。ウバイド文化は、後のシュメール文明の宗教・建築・社会構造の原型となりました。
続くウルク期になると、都市化が急速に進みます。ウルクは巨大な神殿区を築き、交易網を広げ、人口が爆発的に増加しました。この時代には粘土板による記録が始まり、絵文字から楔形文字へと発展していきます。行政や経済の管理が複雑化し、都市国家の原型が整いました。
そしてジェムデト・ナスル期は、ウルク期の成果が一気に成熟した短い移行期です。彩文土器や高度な行政文書が見られ、都市国家はより組織化され、神殿と王権の力が強まっていきます。この時代を経て、メソポタミアは本格的な歴史時代へと踏み出し、初期王朝時代へとつながっていきます。
蛇神大物主神より授かりし神秘の恩恵
史上初!潜在意識の深海で甦る ― 奇跡の再生ヒーリング
薬に頼らずメンタル不調を瞬時に解消

ハラフの丘で色彩豊かな土器が生まれ、祈りが模様となって踊り出した頃、
さらにメソポタミアの南の大地では、別の変化が静かに始まっていました。
その地は、ティグリス川とユーフラテス川がゆっくりと流れ、
季節ごとに大地へ肥沃な土を運ぶ、豊かな世界でした。
春には川があふれ、夏には乾いた風が吹き、秋には大地が黄金色に輝き、
冬には静かな雨が村を包み込みます。
そんな地に、どこからか突如として現れた人々やってきて、
新しい暮らしを築き始めました。
その住人とは「ウバイド人」と呼ばれるようになります。
後に ウバイド文化 と呼ばれる時代の幕開けです。
ウバイド期は、シュメール文明(紀元前3500年頃〜)に先行する文化 とされており、
4期にわけられます。
灌漑農業の導入によって農業は飛躍的に発展し、さらに車輪の使用や銅器時代の到来によって技術が高度化していきました。これらの発展は、後のシュメール文明へと受け継がれていきます。
この文明では、首長制が導入されたことで集落の構造が次第に集権的になり、従来の平等性が失われていったと考えられています。また、ウバイド文化は女系的な社会構造を持ち、経済や文化を通じて比較的平和的に広まっていったと推測されています。
しかし、ウバイド人は後の時代になるとこの地を離れ、どこへ消えたのかは現在も謎とされています。
紀元前5500-4700(ウバイド1期:エリドゥ期):エリドゥを中心にペルシャ湾海岸部に集落。
5つの都市があった。
紀元前4800-4500 (ウバイド2期:ハッジ・ムハンマド期):灌漑農業が始まり広まる
紀元前4500-4000(ウバイド3,4期) :急速な都市化と交易網の進展

ウバイド文化の中心となったのは、
「エリドゥ」と呼ばれる小さな集落でした。
エリドゥは、湿地帯のほとりにあり、
水鳥が舞い、魚が跳ね、葦が風に揺れる、生命に満ちた場所でした。
この地に暮らす人々は、
大地の恵みをもたらす存在を「エンキ」と呼び、
その力に感謝し、祈りを捧げました。
最初は小さな祈りの場でした。
葦で編んだ小屋のような、素朴な建物。
しかし、人々の祈りが深まるにつれ、その建物は少しずつ大きくなり、
やがて 「神殿」と呼べる形 を持ち始めました。
シュメールの神話によりますと、
エリドゥは神エンキ(後のアッカド神話におけるエアに相当)が建設した都市とされています。
また、シュメール王名表では、人類最初の王権が成立した都市として位置づけられています。
シュメール王名表には、はっきりとこう記されています。
「王権は天より降り、エリドゥにあった」
つまり、
エリドゥは神々が最初に王権を授けた都市=人類最初の王都
とされているのです。
シュメール人はエリドゥを
「世界最初の都市」
とみなし、神エンキ(淡水・知恵の神)の聖地として崇拝しました。
エンキの神殿はアプスーと呼ばれる淡水の水辺に建てられていました。
この神殿は エアプス(「深きものの家」)、あるいは エエングラ(「水の高僧の家の山」) と呼ばれ、エンキが水を司る神であることを象徴しています。
エンキの配偶神としては、ニンキ、ニンフルサグ、ダムガルヌンナ、ウリアシュ(Uriash)、ダムキナなど複数の女神が伝えられています。これらの女神の神殿はエンキ神殿の近くに位置し、エサギラ(「聖なる貴婦人の家」) と呼ばれていました。
エリドゥはウルから南東方向に約10キロの距離にある地。シュメール神話「エリドゥ創世記」では、
大洪水以前に神々が5つの都市を建設したとされます。その最初が エリドゥ で、王名表の都市の順番も、神話と一致しています。この「大洪水」は、旧約聖書のノアの洪水と関連づけて語られることが多く、学術的にも比較研究が進んでいます。
シュメール神話では、大洪水が起こる以前に5つの都市が建設されたとされ、このとき起こった洪水が旧約聖書に登場するノアの方舟と考えられています。また、ウル第3王朝期に巨大なジッグラッドがつくられ旧約聖書に登場するバベルの塔のオリジナルとも推測されています。

イラク南部ジーカール県のウル遺跡の西6キロメートルにあるのが
テル・アル=ウバイドという遺丘(テル)。
そこで発見された遺跡がこの文化の代表しています。
テル・アル=ウバイド は南北500メートル、東西300メートル、
地表から2メートルほど盛り上がった墳丘で、
最上部には初期王朝時代のメソポタミア最初の神殿が建っていました。


最初の神殿
神殿は、単なる祈りの場ではありませんでした。
そこは、村の中心であり、
食料の管理、道具の分配、祭りの準備など、
共同体の運営を担う場所でもありました。
神殿を守る者たちは、
大地のリズムを読み、
川の流れを観察し、
季節の巡りを人々に伝えました。
こうして、神殿は
「知恵の場所」
となり、
やがて 「権威の象徴」 へと変わっていきます。
この変化は、後のメソポタミア文明における
王権と神殿の関係の原型となりました。
ウバイドの村々は、ハッスーナやハラフよりも大きく、
家々は四角く、部屋がいくつもあり、
共同体はより複雑な役割分担を持つようになりました。
農耕はさらに発展し、
人々は川から水を引くための 灌漑(かんがい) を整え、
広い畑を育てました。
畑を耕す者、家畜を育てる者、土器を作る者、
そして神殿を守る者――
人々の役割は多様になり、
村は次第に 都市の原型 へと変わっていきました。
ウバイド文化の村々は、
川沿いに広がり、互いに交易を行い、
大地の恵みを分かち合いました。
そのつながりは、
やがて 都市の誕生 へとつながっていきます。
シュメール神話に登場する
エリドゥ、ウル、ウルク――
これらの名は、まだ小さな村にすぎませんでしたが、
大地はすでに、彼らを未来の都市へと導いていました。
文明の花が開く前の、静かな準備の時代。
それが、ウバイド文化の時代でした。
ハラフの土器が色彩豊かで踊るような模様だったのに対し、
ウバイドの土器は、より落ち着いた色合いを持っていました。
淡いクリーム色の地に、
緑がかった黒で描かれた静かな線。
その線は、川の流れのように穏やかで、
大地の呼吸のようにゆるやかでした。
ある老職人は、土器に線を描きながら言いました。
「これは、川の声だよ。
私たちを育て、命を運び、未来をつくる声だ」
その言葉は、村の若者たちの胸に深く刻まれました。
この文化特有の土器は、黒や褐色で幾何学模様を彩色された、黄褐色や緑がかった色の彩色が特徴








ウバイド4期(紀元前4500-4000年頃)の女神像
ウルで発見

調教師図のテラコッタスタンプ
紀元前4000年頃

画像参考:ubaid period

紀元前3800年頃から気候の乾燥がはじまり、
農業効率が低下することでウバイド人はメソポタミアを去っていきます。
ウバイド人が去った後、メソポタミア南部に住み着いたのは
ーーシュメール人と呼ばれた人々。
シュメール人は「都市文明ウルク」を中心としてこの地を支配し、
世界最古とも言われるシュメール文明を発展させていきます。
ウルク(Uruk)は旧約聖書の創世記には、
エレク(Erech、「私は行く」と云う意味)と記され、
現在のイラク(Iraq)の国名由来になっています。
紀元前4000年~前3100年頃までの時代は、
ウルクの名を取ってウルク期(ウルク文化)
と呼ばれます。
ウルクは、ティグリス川とユーフラテス川の間に位置し、
肥沃な土と水の恵みに満ちた場所でした。
ここに人々は集まり、村はやがて都市へと成長していきます。


ウルクでは、家々が整然と並び、道が作られ、
神殿が高く築かれ、広場が生まれました。
人々は神殿を中心に暮らし、
農耕、交易、祭祀、工芸が分業され、
社会は複雑な構造を持ち始めました。
この時代、人々は 車輪 を使い始め、
銅器 を用いて道具を作り、
灌漑農業 をさらに発展させました。
こうして、ウルクは単なる村ではなく、
「都市」と呼べる存在 へと変貌していったのです。
ウルクでは、神殿が都市の中心にあり、
その神殿を守る者が、都市の運営も担うようになりました。
こうして、神殿の長が 王(ルガル) となり、
神の代理として都市を治める体制が生まれます。
王は神殿で祈りを捧げ、
祭りを主催し、
人々に秩序をもたらしました。
この体制は、後のシュメール文明における
神権政治の原型 となります。
都市が大きくなるにつれ、
食料の管理、道具の分配、祭祀の記録など、
情報を残す必要が生まれました。
人々は粘土板に印を刻み、
やがてそれは 楔形文字(けっけいもじ) へと進化します。
最初の文字は、数や物の記録でした。
しかし、次第に神々の名、祈りの言葉、物語が刻まれるようになります。
文字は、文明の記憶となり、
人々の精神世界を形にする道具となりました。
メソポタミアから世界最古の文字「楔形文字」が出現していることはよく知られていますが、実はそれ以前に、その原型となる文字がこの時期からウルク遺跡で誕生しています。それが「ウルク文字」あるいは「ウルク古拙(こせつ)文字」と呼ばれるものです。ウルクのイナンナ神殿遺跡地下深くから小型の粘土板が多数出土しており、これらには人間の頭、手、足、ヒツジなどの動物、魚、数字を表す文字記号などが刻まれ神殿奉納品の記録文書として考えられています。
ウルクの守護神は、イナンナ。
愛と戦い、豊穣と知恵を司る女神です。
イナンナの神殿は都市の中心にあり、
人々は彼女に祈りを捧げ、
祭りを通じて神と人とのつながりを深めました。
当時、この女神は女神イナンナ以外に冥界の神イナンナ、朝のイナンナ(明けの明星)、暮れのイナンナ(宵の明星)といった4つの顔をもつ女神として崇拝されていました。
そして、この女神が後のイシュタル、ビーナス、イシス信仰の原点へとつながっていきます。


ウルクのイナンナ神殿見取り図
ウルク市は東西2つの神殿域をもつ構造をしており、神殿の名に基づいて東側を「エアンナ(Eanna)地区」、西側を「アヌ(Anu)地区」と呼んでいました。ウバイド期にそれぞれあった小さな集落がウルク期には合併し、エアンナ地区とアヌ地区へと成長したものとかんがえられています。
エアンナ地区はウルク期から金星によって象徴される女神イナンナに捧げられていたことが明らかです。


「ウルクの大杯」紀元前3200~3000年頃
エアンナ地区のイナンナ神殿で発見されたもので物語の浮彫彫刻が施された作品の中では現存する最も古い作品の一つ。本来は2つあり対になっていたと考えられています。

イナンナ神
ウルクの大杯に描かれた場面では、メソポタミアの主要な女神の一柱である イナンナ(後のイシュタル) が中心に立っています。彼女の背後には 2本の葦束 が描かれており、これはイナンナの象徴であり、ウルクの エアンナ地区のイナンナ神殿 を示す記号でもあります。この葦束は、ウルク古拙文字において「イナンナ」を表す文字としても使われています。
イナンナは裸の姿で描かれ、果実や穀物の入った供物を捧げられています。そのそばには儀式用の装束を身につけた人物(王=ルガル、あるいは首長・神官)が立ち、後方からは彼に向かって行列が近づいています。
葦束の背後は神殿内部を表しており、二頭のヒツジ、ヒツジの背に置かれた台の上の二人の人物(神または神像と考えられる)、ガゼルやライオン形の容器、犠牲として奉納された牡牛の首、パンを盛った高杯、供物籠、大杯などが描かれています。
ウルクの大杯の図像は、
ウルクの大杯
上段:王が豊穣を祈願または感謝する場面
中段:収穫物の奉納
下段:豊穣の光景
を表していると考えられています。
ウルク革命とは、
都市の誕生・文字の発明・神殿と王権の融合
という三つの変化が同時に起こった、
人類史上初の文明的転換です。
この革命によって、
人々は記憶を残し、秩序を築き、
神々と共に未来を描く力を手に入れました。
大地は語り始め、
人々はその声を文字に刻み、
都市は神々の居場所となり、
文明は静かに、しかし確かに、花開いたのです。
ビールの登場

シュメール人は紀元前4000年頃にはビールを開発し飲んでいたようです。
ただし、この時代のビールは濃厚であったため、ストローのようなものでろ過しながら飲んでいました。

王権が天から降って、まずエリドゥにあった。
エリドゥではアルリムが王となり、二万八千八百年統治した。
アラルガル(Alalĝar)は三万六千年統治した。
二王は六万四千八百年統治した。大洪水が地を洗い流したのち、王権が天から降り、それはまずキシュにあった。
キシュは戦いで敗れ、王権はエアンナに移された。
そこでは太陽神ウトゥ(英語版)の子、メスキアッガシェルが王と大祭司を兼ね、三百二十四年統治した。
ウルクは戦いで敗れ、その王権はウルに移された。
ウルではメスアンネパダが王となり、八十年統治した。四人の王が百七十七年統治した。ウルは戦いで敗れた。・・・・
~シュメール王名表~
ウルクの地に都市が生まれ、文字が刻まれ、神殿が高く築かれたとき、
メソポタミアの大地には、いくつもの都市が次々と姿を現し始めました。
ウル、ウルク、ウンマ、エリドゥ、キシュ、
シッパル、シュルッパク、ニップル、マリ、ラガシュ、ラルサ
それぞれの都市は、神々の名を冠し、
神殿を中心に人々が暮らし、
王が神の代理として都市を治めました。
こうして、メソポタミアには 都市国家(シティステート) が誕生し、
それぞれが独自の文化と神話を育てながら、
時に争い、時に交易し、文明を広げていったのです。

シュメールの王は、単なる支配者ではありませんでした。
彼らは 神の代理人(ルガル) として、
神殿を守り、祭祀を司り、都市の秩序を保つ役割を担っていました。
王は神殿で祈りを捧げ、
神々の意志を読み取り、
人々に季節の巡りや農耕の時期を伝えました。
この時代、王権は神殿と深く結びついており、
神と王が一体となって都市を導く構造 が生まれていました。
都市には、神殿、王宮、広場、倉庫、職人の工房、住居が整然と並び、
人々は役割に応じて暮らしていました。
農民、職人、神官、兵士、商人――
社会は階層化され、
大半を占めていたのが被支配階級である人民と奴隷でした。
ウバイド期の平等な共同体から、
集権的な都市社会 へと変化していったのです。
この変化は、文明の成熟とともに、
格差と秩序の両面をもたらすもの でした。
シュメール人の生活は農耕と牧畜を営んでいました。
この時期は灌漑農業がおこなわれ、
大麦やヒヨコマメ、ヒラマメ、雑穀、ナツメヤシ、
タマネギ、ニンニク、レタス、ニラ、辛子
を栽培し、牛や羊、山羊、豚などの家畜を飼育していました。
宗教や呪術などの神秘的な思想や、
自然界に宿る様々な神々を守護神として崇めるアニミズムが根付いており、
自然神を崇拝することで川の氾濫は鎮まり、豊作が約束されると信じていました。
都市または集落の中心となる建物の跡からは、食糧の配給などが書かれた粘土板、円筒印章(円筒形の印章)が見つかっています。

巨大なライオンとライオンの頭を持つ鷲の図像。(前4100年-前3000年)

ウルク期の円筒印象と印影。前3100年頃。
この時代、文字は単なる印から、
より複雑な記号体系へと進化 していきました。
・物資の管理
・交易の記録
・神殿への奉納品の一覧
・労働者の名簿
こうした記録が粘土板に刻まれ、
文字は都市を動かすための「力」となっていきます。
文字はまだ物語を語る段階ではありませんでしたが、
文明の記憶を残すための道具 として確かな地位を築き始めていました。


シュメール文明の初期には、
イナンナ、ニンフルサグ、ニンキ など、
多くの女神が都市の守護神として崇拝されていました。
これらの女神たちは、
豊穣、生命、知恵、癒しを司り、
人々の精神世界に深く根づいていました。
ウバイド期の女系的な文化は、
この女神信仰の中に記憶として残され、
都市の祭祀や神話の中で静かに息づいていたのです。
シュメール人の間では、アヌンナキの創造神話が語り継がれていました。
アヌンナキとは、シュメール神話に登場する神々の集団です。
そして、このアヌンナキが人間を創造したとされています。
シュメールの都市では、
神々の物語が壁画に描かれ、
粘土板に刻まれ、
祭りで語られました。
イナンナの冥界下り、エンキの知恵の流出、ギルガメシュの冒険――
それらは人々の心をつなぎ、
都市に魂を与えるものでした。
こうして、文明は単なる技術や制度ではなく、
神話と祈りに支えられた精神世界 として育まれていったのです。
ジェムデト・ナスル期の特徴のひとつは、
鮮やかな彩色土器 の登場です。
赤、黒、白の線が交差し、
幾何学模様が踊るように描かれた土器は、
都市の豊かさと職人の技術の高さを象徴していました。
ウルクやキシュなどの都市では、
神殿を中心に人々が集まり、
都市はより複雑で大規模な姿へと成長していきます。
ジェムデト・ナスル古墳からの出土品




シューメール人はウバイド人とは違い、
闘争的で武力によって支配する性格をもっていました。
やがて都市国家が増えてくると、
都市間の武力紛争が活発化してくるようになります。
水を巡る争い、土地を奪い合う戦い、
王と王がぶつかり、
神々の名のもとに兵が動きました。
文明は光をもたらすと同時に、
影もまた生み出すもの でした。
それでも人々は祈りを捧げ、
神々の声を聞きながら、
都市を築き、未来を描き続けました。

ジェムデト・ナスル期の終わりとともに、
メソポタミアの大地には、いくつもの都市が力を蓄え、
互いに競い合う新しい時代が訪れました。
その時代こそが、
初期王朝時代(紀元前2900〜2350年)。
後に「群雄割拠の時代」と呼ばれる、
都市国家同士が覇権を争った激動の時代です。
この時代、メソポタミアには多くの都市国家が存在しました。
・ウルク(イナンナの都市)
・ウル(ナンナの都市)
・ラガシュ(ニンギルスの都市)
・キシュ(王権の象徴)
・ニップル(エンリルの聖地)
・エリドゥ(エンキの古都)
それぞれの都市は守護神を頂き、
神殿を中心に王(ルガル)が統治しました。
王は神の代理人として、
祭祀を司り、軍を率い、都市を守る存在でした。
この時期から青銅器が開発製造され、世界へと広がっていくことになります。
シュメール王名表の説話によれば、紀元前2900年ごろ伝説的な大洪水(ノアの方舟伝説のモデルとなった)の後、最初に王権が降りたとされる都市がキシュ。
紀元前2800年頃のキシュ第一王朝の エンメバラゲシ は考古学的にもその実在が確認されている最古の王でもあります。紀元前2800年頃にはキシュが一時エラム人に支配された時期もありますが3代にわたってシュメールを支配していたとされています。紀元前2700年頃になると、シュメール下流の都市が繁栄しキシュは衰退していきます。

各都市国家の特徴
| 都市名 | 特徴 |
| エリドゥ |
都市神エア(エンキ)。シュメール王名表では人類最初の王権が成立した都市とされている。紀元前5000年ごろ最初期の村落が形成され、紀元前2050年までに都市は衰退した。 |
| ウルク | イラクの地名の元となった最初にできた都市。最高神アヌ(Anu),女神イナンナ(エレキシュガル)崇拝の地。2900年頃は世界最大都市で指導的役割を果たした。ギルガメシュ叙事詩、楔形文字などで知られる。 |
| シッパル | 太陽神ウトゥ(シュマシュ)を守護神とする。大洪水以前の時代に天から王権が降りた都市の1つ。アッカドのシャマシュにシュメールのウトゥが取り込まれていく信仰過程で、性別が反転し男神に変化していった |
| キシュ | 守護神は戦いを司る男性神ザババ。伝説的な大洪水の後、最初に王権が降りたとされる都市がキシュ。実在した最古の王エンメバラゲシが統治。紀元前3千年紀に入るとシュメール人やセム人達にとって特別な地位を持った都市として歴史に登場する。 |
| ウル | 月神ナンナ(シン)が守護神の都市。覇権争いの有力候補でウル第三王朝時シュメールを支配。 |
| ニップル | 嵐の神エンリル神崇拝の中心地であり、その宗教的重要性のために古代の王たちによって争奪が繰り返された。 |
| シュルッパク | 都市神は穀物と大気の女神ニンリル(スドゥ)。大洪水以前の時代において最後に「王権」が天から降りた都市とされる。 |
| ラガシュ | ラガシュ。都市神はニンギルス。シュメール初期王朝時代に繁栄し、現代にメソポタミア最大級の都市遺跡を残している。 |
| ウンマ | 都市神はシャラ。ウル第3王朝の下で、ウンマは重要な地方的中心となった。 |
都市国家キシュ

キシュ廃墟跡
初期王朝時代は、
都市国家同士が覇権を争う時代でもありました。
水路を巡る争い、
農地の境界を巡る対立、
交易路の支配権を巡る戦い――
都市は互いに競い合い、時に激しく衝突しました。
その中でも特に有名なのが、
ラガシュとウマの戦争 です。
これは歴史上最古の戦争記録のひとつであり、
粘土板には戦いの経緯や条約が刻まれています。
シュメール人の軍隊は、ほとんどが歩兵で構成されていました。
軽装兵は斧、短剣、槍を運搬。
正規兵はさらに兜、革製のキルトなどの防具を着用し、
古代ギリシャでも行われていたファランクスを編成していたことで知られています。

ファランクス
この時代の都市国家は、
神殿(エン) と 王(ルガル) の二つの権力が存在していました。
・神殿は宗教・経済の中心
・王は軍事・行政の中心
両者は協力しながら都市を運営しましたが、
時に対立することもありました。
この二重構造は、
後のバビロニアやアッシリアにも受け継がれる
メソポタミア独特の政治体系です。
世界最初に実在する王エンメバラゲシが統治した王朝をキシュ第一王朝と呼び、ここではシュメール語とセム語を話す人が混在していた地域とされています。後にエラム人の支配を受けた後、エラム人を追放し キシュ第2王朝が 成立します。その後はウルクによって破壊を受けますが伝説的な世界最初の女性指導者とされる女王ク・バウ(クババ)によって復活。 キシュ第4王朝まで 王朝が復活します。
第4王朝の王ウル・ザババが後のアッカド帝国を築く家臣であったサルゴンに倒され王朝が途絶えました。
後にキシュ王(Lugal Kish.KI)という称号が覇権的性格を持った王の称号として用いられ世界の王の意味で使用されるようになっていきます。

女王ク・バウ
初期王朝時代には、
文明がさらに成熟していきました。
都市はますます複雑になり、
人々の生活は神殿と王権のもとで組織化されていきました。

この時代は、
ギルガメシュ王 がウルクを治めた時代とも重なります。
彼は実在した王でありながら、
後に神話化され、
「ギルガメシュ叙事詩」の主人公となりました。
彼の物語は、
都市国家の王がどれほど強大で、
どれほど孤独で、
どれほど神々と近い存在であったかを象徴しています。
都市国家が互いに争い続ける中で、
北方から新しい勢力が力を蓄え始めました。
その勢力こそ、
後にメソポタミアを統一する アッカド人 です。
初期王朝時代は、
アッカド帝国の登場によって幕を閉じ、
メソポタミアは新たな時代へと進んでいきます。
蛇神大物主神より授かりし神秘の恩恵
史上初!潜在意識の深海で甦る ― 奇跡の再生ヒーリング
薬に頼らずメンタル不調を瞬時に解消