トラウマと脳科学

虐待、事故、暴力、災害といった肉体的、精神的な衝撃を受けることで、長期的に精神・体調面に不調が生じる存在がトラウマ(psychological trauma)です。
トラウマは、1887年ピエール・ジャネによって
ギリシャ語から「心的外傷」という意味で作られた造語。
後にジークムント・フロイトによってトラウマ概念が広められ知られるようになりました。
フロイトとともに研究していたアドラーはフロイトと決別し、トラウマの存在を否定。
独自の「個人心理学」を提唱します。
Aがあれば相反するBが生じる。
これも陰陽の関係、西洋哲学風にいえば、
「テーゼ」「アンチテーゼ」
エヴァンゲリオン
〜残酷な天使のテーゼ〜
フロイト(テーゼ)、アドラー(アンチテーゼ)も心理学分野では有名であっても、
精神疾患治療に功績をあげるほどの実績は残せていません。
有名だからって優れているわけではないのです。
精神医療(テーゼ)、反精神医療(アンチテーゼ)もしかり・・。
い〜つか、き〜づくでしょう
天使のようなテーゼは残酷だということが〜

この女性の方も覚醒者の一人
「覚醒」
精神医学、心理学的な見方では精神疾患の治療に十分な成果をあげられていないことから、現在は、脳科学的にトラウマ概念が見直されてきています。精神状態、うつ病などの精神疾患の克服、精神状態を整えるには脳科学のことを知る方が有益です。
2つのトラウマ後遺症(PTSDと解離性障害)

事故などのケガで起こる外傷(陽)と対照的なのがトラウマ心的外傷(陰)。
目に見える傷はわかりやすく、同情してくれやすい。
一方、内面の心の傷は見えないのでわかりにくいし理解されにくい。
対照的です。
心的外傷による後遺症(トラウマ)はPTSDがよく知られていますが、
対照的な性質の解離性障害もあります。
PTSDは交感神経を高め覚醒作用をもつ陽性的性質、
解離性障害は副交感神経を高め鎮静作用をもつ陰性的性質
の心的後遺症になります。


PTSDと解離性障害は一体で存在

近年の脳科学の研究では、PTSDと解離性障害は正反対の性質をもつものと考えられています。
ただし、火と水のようにお互い相入れない異質なものではなく、連続性をもった繋がりをもったものと捉えられています。
すなわち、色ではグラデュエーション的、光ではスペクトル的な表現になります。


PTSDと解離性障害が連続性をもっているということは、
ストレスをうけトラウマとなるときは、それぞれが単独ではなく
両方同時に受け取っているということになります。
これはどういうことかというと、
1回あたりのトラウマを受けるとき
PTSD100%
解離性障害100%
受け取るといったものではなく、
PTSD80%+解離性障害20%(PTSDという場合)
PTSD20%+解離性障害80%(解離性障害という場合)
といった感じです。

PTSDは交感神経、解離性障害は副交感神経を高めるトラウマ。
一般的な自律神経の考え方だと
交感神経は不安を高める、悪玉的なもの、
副交感神経は不安を解消してくれる善玉的なもの
と考えられています。
こう考えると・・
トラウマは後遺症は
「不安とリラックスを同時に与えるもの?」
とわけが分からなくなってしまいますね。
この矛盾を解決するには、ポリヴェーガル理論という3元論的な
自律神経の考え方が必要になっていきます。(後で説明します)
複雑性PTSD

複雑性PTSDとは、いくつものトラウマ的な出来事を経験し積み重なった後遺症です。
複雑性PTSD=PTSD+解離性障害+解離性障害+PTSD+・・
ここでは、PTSD、解離性障害と記載していますが、先に述べたように、PTSDと解離性障害は連続性をもっているので、それぞれ解離性障害あるいはPTSDも何パーセントか含まれています。
別の表現にすると、
複雑性PTSD=
PTSD60%解離性障害40%
+ PTSD30%解離性障害70%
+ PTSD40%解離性障害60%
+ PTSD80%解離性障害20%
+・・・
といった感じですね。
当然、1回よりも、何回も強いトラウマを受けた人のほうが心の傷が深くなります。
また、HSPのように生まれつき過敏な人は、
鈍感な人に比べると軽度なストレスでも感じやすくなるので、
トラウマを受けやすくなるものと思われます。
うつ病、強迫性障害などの精神疾患も、過去のトラウマの積み重ねで起こる複雑性PTSDの結果生じるものです。機能不全家庭で育ち、家庭内でも安心感が得られなかった状況の場合は慢性的にストレスを抱えていることになるので、そういった人などはうつ病になりやすい傾向にあります。

PTG(Post Traumatic Growth:心的外傷後成長)

心が傷つくと、様々な心身の症状が出て、日常生活に支障をきたすPTSDはよく知られていますが、これとは逆に、 衝撃的な出来事の後で、むしろ成長することがあることを示すことをPTGといいます。
例えば、有名なのが「逆説的思考法」で知られるヴィクトール・エミール・フランクルのナチスドイツに監禁されていた時のエピソードがよく知られています。外傷後成長は、傷ついた人がただ元に戻るのではなく、災害や事件の前よりも、肯定的な変化、成長が見られるといったものです。
このような例は、よく向精神薬による辛い断薬、比較的克服可能な抑うつ、パニック障害を切り抜けた人にもよく見られます。
一方で薬物に頼り切ってしまった人は、非業な結末で終えてしまった人が多いことが調べてみると明らかです。向精神薬を飲んでいる間PTGになることはありません。

特に大うつ病を発症してしまうと一般的な療法、投薬治療では生涯PTGになることは困難です。大うつ病は、克服困難な精神疾患の一つではありますが、当ヒーリングを利用すると抜け出せない負のループから脱出する手助けになります!
医原病(薬物性PTSD)

薬によって健康が損なわれることを「医原病」といいます。
ストレスではないですが、精神科で処方される向精神薬も長期服用するとうつ病あるいは不安障害を増殖させる薬です。抗うつ薬は交感神経を高めてフラッシュバック、動悸、自傷行為を抗不安薬、睡眠薬は副交感神経を高めて解離、無気力、失感感情、うつ的症状を引き起こします。
人によってはパーソナイティー障害を引き起こすこともあるようです。精神科に通い向精神薬を処方されることでその副作用によって医原病にかかっていることになります。健常者の人でも、双極性障害、統合失調症にまでされるケースもあるので気をつける必要があります。現在最も多いのが医原病、いいかえると薬物性PTSDともいえます。